こうのとり 世界に誇れる日本の貢献だ


 国際宇宙ステーション(ISS)に物資を補給する「こうのとり」9号機が打ち上げに成功した。こうのとりは今回が最終機。11年間で9回の打ち上げを全て成功させ、課せられたミッションをほぼ完璧にこなした。世界も認めた、日本の誇れる見事な国際貢献である。関係者のこれまでの努力に深く敬意を表したい。

 今後は開発中の後継機「HTV-X」に引き継がれ、米国が構想する月周回ステーションへの輸送も視野に入れる。来年度予定の打ち上げが待ち遠しい。

 初のドッキング方式

 こうのとりは、米スペースシャトルが2011年に退役した後、ISSにスケジュール通りに物資を送り届け、「宇宙の定期便」として世界から高い評価を得た。几帳面(きちょうめん)かつ緻密で細やかな任務遂行はいかにも日本らしい貢献である。

 11年1月に打ち上げた2号機では、鹿児島県・種子島の水80㍑を初めて輸送し、15年8月の5号機からは打ち上げ80時間前まで荷物を追加搭載できる特徴を生かして果物などの生鮮食料品も輸送し、宇宙飛行士にも好評だった。

 それだけではない。ISSから放出する超小型衛星などの新技術につながる装置を搭載し、宇宙利用の可能性も広げた。12年7月の3号機以降、大学や企業が製作した超小型衛星を搭載して日本実験棟「きぼう」から放出。衛星打ち上げの窓口を広げ、宇宙の商業利用や人材育成、発展途上国への提供を通じた国際貢献も果たしてきた。

 特に貢献度が大きいのは、シャトル退役後、ISSの維持に欠かせない電力を供給するバッテリーなどの船外機器や、大型の実験ラックなどの船内装置を運べる手段がこうのとりしかなく、その期待に見事に応えていったことである。

 こうした貢献を可能にした技術も見逃せない。ISSの下方から速度を合わせて接近し、ロボットアームでキャッチする、米航空宇宙局(NASA)をして「ミラクル」と言わしめた世界初のドッキング方式である。

 秒速約8㌔という高速で移動するISSへの接近では、GPS相対航法を使ったきぼうとの近傍域通信やレーザーによって正確な位置を測定した。この方式はその後、米民間宇宙船「シグナス」にも採用され、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が支援するまでになった。

 有人宇宙船への発展を

 こうのとりは9号機で任務を終えるが、これまでに培われた技術は現在開発中のHTV-Xに引き継がれる。システムの効率化や軽量化によりコストを半減するとともに、積載量を現在の約6㌧から約8㌧に増やすなど輸送能力を向上。21年度に開発中のH3ロケットで初号機を打ち上げる予定である。

 ISSだけでなく、推進系の能力向上により月軌道間輸送機として、米国が構想している月周回ステーションへの輸送も視野に入れる。さらに与圧部がISS係留中は宇宙飛行士が立ち入ることのできる仕様になっていることから、有人宇宙船としての発展型も期待される。さらなる貢献へ、地道に開発を進めてもらいたい。