新型コロナ禍 中国とWHOは責任の自覚を


 世界的大流行(パンデミック)を起こした新型コロナウイルスの感染者は欧米を中心に144万人を超え、死亡者は8万人以上となる中、発生地の中国では湖北省武漢市の封鎖が解除された。が、市場経済に対しても世界的な大打撃となっており、初動の遅れを招いた中国と世界保健機関(WHO)の責任は大きいと言わざるを得ない。

武漢市の都市封鎖解除

 武漢市は1月23日から市外への移動を停止する都市封鎖(ロックダウン)の措置が取られ、77日ぶりの解除となったが、この間、新型コロナ感染は世界中に広がり、特に欧米諸国に甚大な災禍をもたらしている。武漢封鎖は、中国の新年である1月25日の春節の連休シーズンに差し掛かった時期で、既に外国旅行を含む約200万人が中国内外に出た後だった。

 武漢市では春節を迎える頃に深刻な医療崩壊が起きていた状況などが、インターネット交流サイト(SNS)を通じて市民から告発されていた。12月初めの原因不明の肺炎患者確認から1カ月半余り経過しており、新型コロナの感染拡大は加速度的推移を示す各国データを踏まえても、当時の武漢市は爆発的感染拡大が起きていた。

 中国は、昨年末に肺炎をもたらしている重症急性呼吸器症候群(SARS)に類似したコロナウイルスの感染拡大をSNSで警告した武漢市の李文亮医師らを当初弾圧し、パンデミックに至って「烈士」としたが、感染が既に広まった世界各国は人の外出も経済活動も止めるほかない万事休すの状態だ。

 感染者が約40万人で世界最多となり、死亡者も1万2000人を超えている米国では、死者数が最大24万人に達する恐れがあると政府対策チームが予測した。死亡者が1万7000人を超えるイタリア、1万3000人を超えるスペイン、1万人を超えたフランスのほか、英国のジョンソン首相の感染による集中治療室への入院など各国要人にも命の危険が及んでいる。

 中国の情報公開に問題があるのは明白だが、今年に入っても新型コロナに対しては人から人への感染は確認されていないなど矮小(わいしょう)化された認識が続いていた。これをいち早く厳格にチェックする役目を果たすべきが国際機関であるWHOのはずだ。

 しかし、武漢封鎖が始まってもWHOは1月23日に緊急事態宣言を見送り、同30日に同宣言をしたが、パンデミック宣言をしたのは3月11日で、中国で習近平国家主席が武漢入りし収束をアピールした翌日だった。

 トランプ米大統領は、1月に中国からの入国制限を決めた際にWHOが「感染拡大防止に効果的でない一方で、経済的、社会的影響が著しい」と否定的だったことを批判し、WHOは中国寄りであるとして拠出金停止を検討することを発表した。最も多くの感染者が出ており、WHOの振る舞いには納得できないだろう。

 再発防止へ猛省せよ

 医療保健機関であるWHOが重んじるべきは、習政権の威光ではなく李医師の告発ではなかったか。世界を犠牲にした人災の側面は否定し難く、再発防止のため猛省を促したい。