パンデミック宣言 中国とWHOの責任は重い


 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が、世界で感染が広がる新型コロナウイルスについて「パンデミック(世界的流行)と見なせる」と表明した。

後手に回った対応

 国際社会は総力を挙げて感染を封じ込める必要がある。ただ感染拡大の大きな原因は、発生源の中国の初動の遅れとWHOが中国の意向を忖度(そんたく)したために対応が後手に回ったことだと指摘しないわけにはいかない。

 WHOがパンデミックの呼称を使うのは、2009年の新型インフルエンザ以来11年ぶりとなる。WHOによれば、感染者数は118カ国・地域で12万5000人に迫っている。各国は感染拡大防止に全力を挙げるべきだ。途上国への医療支援なども求められる。

 トランプ米大統領は、英国を除く欧州から米国への入国を30日間にわたって禁止することを表明した。日本では中国と韓国発の航空機・船舶で到着した旅客に対し、2週間の待機と公共交通機関の利用自粛を要請する措置を取っているが、国内の感染拡大が続くようであれば水際対策の一層の強化も検討する必要があろう。

 一方、テドロス氏がこのタイミングでパンデミックを表明したことを疑問視する見方も出ている。表明は、中国の習近平国家主席が新型ウイルス発生地の湖北省武漢市で国内での抑え込みを宣言した翌日に行われた。中国で流行のピークが過ぎたことを見届けた上で表明したとみることもできる。全世界で感染が拡大している状況を見れば、WHOが後手に回ったことは明らかだ。

 テドロス氏は中国の新型ウイルスへの対応を全面的に称賛し、他国にも中国を見習うべきだなどと述べている。しかし、情報隠しや初動の遅れで感染を拡大させた中国の責任は極めて重い。テドロス氏の中国への配慮の背景には、中国から多額の経済支援を受けるエチオピア出身ということがあるが、それで中国を批判できないのであれば、人類の健康増進のための組織であるWHOのトップを務める資格はあるまい。

 オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、早い段階で新型ウイルスに警鐘を鳴らした医師が当局に処分されたことなどを挙げて中国の情報隠しを批判。これに対し、中国は「強力な措置や人民の巨大な犠牲により世界にウイルスが蔓延(まんえん)することを効果的に防いだ」などと自画自賛した。

 中国は最近では感染拡大防止に寄与しているかのように振る舞っている。だが全世界で4000人以上が死亡しているにもかかわらず、習氏からいまだに謝罪の言葉がないのは理解し難い。国際社会は中国の責任を追及し続けなければならない。

新型感染症に常に備えよ

 中国では02~03年に大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の際にも情報隠しが問題視された。中国で共産党一党独裁体制が続く限り、今回収束したとしても、第2、第3の新型ウイルスが発生することを想定せざるを得ない。日本を含む世界各国は、平時から新型感染症に備え、十分に対応できる体制を整える必要がある。