新型肺炎 拡大防止最優先の行動を


 安倍晋三首相は新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、全国全ての小中学校、高校、特別支援学校に、3月2日から春休みに入るまで臨時休校とするよう呼び掛けた。極めて異例の措置だ。

 国内でも子供の感染が確認されている。学校を含む社会全体で感染拡大防止を最優先に行動する必要がある。

首相が臨時休校要請

 既に、北海道と千葉県市川市が全公立小中学校などの休校を決定している。首相は休校要請について「流行を早期に終息させるためには、徹底した対策を講じるべきだ」と強調。入試や卒業式を終えていない場合は、感染防止策を取ったり、必要最小限の人数に絞ったりするよう求めた。

 政府の専門家会議は「これからの1~2週間が、急速な拡大に進むか収束かの瀬戸際」としている。政府は休校の判断を地域に委ねる方針を示していたが、ここにきて感染拡大への強い危機感を示した形だ。

 新型肺炎に関しては、子供の感染者は少ないとされている。ただ国内では北海道で小学生の兄弟の感染が確認されたほか、政府のチャーター機で帰国した邦人からも未就学児の感染者が出ている。

 萩生田光一文部科学相は、日本医師会など専門家の見方として「学校で万が一のことがあると集団感染し、患者クラスター(集団)になる可能性がある」と説明した。毎年インフルエンザで学級閉鎖が相次ぐことを考えれば、新型肺炎の感染拡大に備え、休校を要請するのは当然だと言えよう。

 子供の感染を防止するだけでなく、子供を通じて重症化しやすい高齢者や糖尿病などの基礎疾患(持病)がある人に感染を広げないためにも休校措置は重要だ。国内での死者は、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客4人を含め8人に上るが、いずれも高齢者である。

 休校の際には、保護者への配慮も不可欠だ。首相は行政機関や民間企業に対し、子供を持つ職員・社員が休みを取りやすくするよう求めた上で「こうした措置に伴って生じる課題には責任を持って対応していく」と強調した。政府が対策を主導し、社会全体でも拡大防止を徹底しなければならない。

 政府の対策基本方針では、マスクや消毒液などの増産を関連企業に求めるとともに、過剰な在庫を抱えることがないように消費者や企業に冷静な対応を呼び掛けるとしている。マスクの品薄状態の早急な解消に努めてもらいたい。私たち一人一人も買い占めなどは控えるべきだ。

改憲論議の活発化を

 首相はまた、新型肺炎の感染拡大を抑えるため、必要な法案を早急に準備するよう関係閣僚に指示した。

 一方、感染拡大を受けて憲法改正による緊急事態条項の創設を求める意見も出ている。ドイツ基本法(憲法)は11条1項で「移動の自由」をうたうが、2項で伝染病の危険や自然災害などに対処するために必要な場合は制限するとしている。日本国憲法には、こうした条項がない。これを機に、改憲論議を活発化させるべきだ。