米印首脳会談 インド洋守る戦略関係に


 トランプ米大統領は訪問したインドでモディ首相と会談し、米印関係を「包括的グローバル戦略パートナーシップ」に格上げし、ユーラシア大陸とインド太平洋の陸海から影響力の拡大を狙う中国を念頭に安全保障協力を強化していくことで合意した。中国共産党一党独裁政権による覇権主義を牽制(けんせい)する力として南アジアおよびインド洋の自由を守る戦略関係の発展に期待したい。

覇権主義を強める中国

 米国からインドに総額30億㌦以上の武器売却をすることで両首脳は合意し、トランプ氏が「この取引は両国の防衛能力を高める」と述べたことは重要なことだ。2018年9月に米国とインドは初の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開き、両軍の情報共有や軍事演習の拡大で合意し、陸海空統合軍事演習が実施された。今回の首脳会談でも協力が確認され、両国関係はさらに強化された。

 インド側の歓迎ムードは熱く、モディ氏の地元グジャラート州の世界最大級のクリケットスタジアムで10万人が参加した集会「ナマステ(こんにちは)・トランプ」の演出は特別なものだった。もともとインドは、東西冷戦が始まった建国当初から非同盟路線を維持し、第三世界の中心的な国家として発展してきたが、米国など民主主義国との連携に大きく踏み出したものだ。

 またトランプ氏にとっても、秋に大統領選挙を控えインドとの外交成果をアピールすることに加え、米国で政治的な影響力を増すインド系米国人の支持を確保する狙いもあった。

 ただ、両国が関係を強化したそれ以上の理由は、冷戦後に急速な経済成長を遂げた中国が、シルクロード経済圏構想「一帯一路」を海洋進出など軍事力を伴いながら進める覇権主義的傾向を強めており、米国にとってもインドにとっても看過できなくなっていることだ。中国は太平洋の西側からインド洋にかけて南シナ海をはじめ各所で海洋進出を企てており、インドの排他的経済水域(EEZ)にも調査船を航行させている。

 特に、インドは中国と国境紛争問題を抱えている。モディ政権になってからは、17年にブータンが実効支配するドクラム高原で中国が道路建設を行ったことを契機に中印両軍がにらみ合う「ドクラム危機」が起きた。またネパールや島国スリランカなどには親中派政権が誕生しており、スリランカのハンバントタ港は中国の融資で建設され、中国国営企業に99年間租借されることから軍港にされる恐れが生じている。

 西に隣接した親中国家であるパキスタンとの紛争の歴史に加え、北の陸地と南の海洋から挟み撃ちにされた格好で中国の影響が強まっており、モディ政権はインドの伝統的な非同盟主義を見直さざるを得ない状況に立たされていたと言えよう。

 わが国も両国と連携を

 インドは世界最大の民主主義国家であり、トランプ氏は「米印は共に主権と安全を守り、今後何世代にもわたって自由で開かれたインド太平洋地域を維持する」と訴えた。わが国も日米安保条約を軸に連携していくべきだ。