米中間選はトランプの勝利だ!

 11月6日に行われた米中間選挙で、トランプ共和党は上院での過半数を維持したものの、下院では35議席以上を失って過半数を民主党に奪回された。これをもってトランプの“敗北”と考える人は多い。

 だが、中間選挙では現職大統領の政党は議席を減らすのが普通なのだ。権力のチェック・バランスを国民が求めるからだろう。例えば2010年オバマは上院で6、下院で63もの議席を奪われている。それに比べれば下院で減らしたが、上院では過半数51議席に上積みしそうな今回の中間選挙は、トランプ勝利と言ってもよい。

 特に上院を抑えておけば、下院で仮に大統領弾劾案が通っても、上院で否決される。今まで積み重ねてきた政策が修正されることもない。次の最高裁判事も決められる。

 上院選では、トランプが大統領選でヒラリー・クリントンに勝った州選出の民主党議員が再選されたのは最高裁判事承認の賛成に回った1人だけだ。これもトランプの勝利と言える。逆に民主党の「次世代エース」と呼ばれた極左系の新人候補は、全て落選している。共和党候補の倍近い政治資金を集めた候補もいたが落選している。

 民主党には共和党に近い保守系議員も、サンダースに近い極左の議員もいる。今回の選挙で確かに北米原住民系やイスラム系候補者、そして多くの女性議員が当選した。この“多様性”が民主党の力の源泉であると同時に、弱点でもある。このように“多様”な集団が、まとまって活動することが可能だろうか?

 20年の選挙で重要になる“激戦州”であるフロリダとオハイオで、共和党は州知事選挙に勝っている。実はトランプ共和党の基盤は強固なのである。

 それでも下院で過半数を取られた理由の一つは、郊外に住む女性有権者が反トランプに回ったことが非常に大きい。

 その理由は、トランプの中道的政策への妥協が少なかったことにある。例えば子供の頃に親に連れられて不法入国した後に教育も受けて米国社会で労働もしている人々の米国居住合法化の承認と交換で、国境警備強化を実現していたら、国境での「親子引き離し」のような女性が反発する結果にならなかった。郊外に住む共和党支持者は、国境警備の強化を求めているが、人道的移民政策も望んでいて、トランプ大統領は移民政策修正の必要がある。

 下院の過半数を取得した民主党は、トランプ政権の通商交渉を遅らせることで、結果として保護貿易を実現しようとするのではないか。税制に関しては金融取引や海外事業に対する課税強化、また社会問題化している薬価引き下げに関し積極的に議会で追及する可能性もある。

 以上の政策はトランプ氏が予備選時代から実現を望んでいたが、共和党大統領になったため、積極的に実行できなくなった政策なのだ。トランプ氏は民主党と部分的な取引をして今後の2年間で以上のような諸政策に力を入れる可能性がある。

 もし上手(うま)くいかなければ「下院民主党の責任だ」と主張して自らへの支持を強化できる。このように20年再選への道筋は、むしろ広がった。今回の中間選挙は、トランプ大統領の勝利かもしれない。

(敬称略)