北朝鮮のサイバー戦 違法な通貨獲得の手段に

狙われたビットコイン

 北朝鮮の弾道ミサイルに対抗するため、小野寺防衛大臣は、日米が共同で開発する新型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」搭載の「イージスアショア」(陸上型イージス)の導入を決断、この19日にも閣議決定される見通しだ。政府関係者によると、2基配備すれば、日本列島全体をカバーできると想定している。

 かたや、北朝鮮からと見られる木造の漂流船が急増し、厳しい悪天候の中でも苦しい食糧事情により国から指示を受けての中、漁を行っているという。そして北朝鮮は7000人以上とも言われるサイバー軍を抱え、ビットコイン(ネット上の仮想通貨)のマイニング(採掘)にも着手し、今年5月に世界が被害を受けたランサムウェア<Wanna Cry>との関連があるとされる。

 彼らのインターネット活動は多くの西側諸国のそれと変わりがない。例えば、ウェブ検索を行い、アマゾンなどを閲覧している。ツイッターやユーチューブへのアクセスは北朝鮮当局が2016年4月に封鎖したものの、フェイスブックが主流な交流サイトになっている。韓国の情報筋によると、北朝鮮では400万台の携帯が流通しているものの、インターネットにアクセスできるのは限られた指導層と支配層エリートに限られている。

 欧州の懸念も増している。1年前の国際安全保障会合で、北大西洋条約機構(NATO)側は第5条の集団防衛に触れ、日本とNATOが協力して対応することは考えられないとの発言であった。しかし、今年に入り、北朝鮮の核武装や核開発をアピールする姿勢に、NATOと欧州連合(EU)は現実の脅威と受け止め始めた。9月にはフランスのパーリー国防大臣が予想よりも早く欧州が北朝鮮のミサイル射程内に入ると警告を発し、欧州側からロシアのみならず北朝鮮のサイバー活動の背景や現状分析に関心が寄せられている。

 北朝鮮によるサイバー活動の主要目的は、大きく分けて二つある。金政権の永続と北朝鮮指導による朝鮮半島の統一である。朝鮮戦争後、米国や韓国の軍力に対抗するため、奇襲攻撃、迅速な決め手となる戦い、混合戦術を駆使するなど非対称戦略を展開している。

 最近は戦略目標を達成するために複数の戦術を用いる混合戦術を利用している。約2500万の人口を完全に支配し、断固とした金政権への忠誠に関連し、犯罪、テロ活動と破壊的なサイバー攻撃は前述の奇襲と混合戦術に注力した北朝鮮の軍戦略に一致するものであり、北朝鮮を抑制しようと試みる国際経済や政治システムを弱体化させるおまけの存在だ。

ロシアが回線を提供

 ロシア通信大手トランステレコム社が北朝鮮にインターネット回線を提供したことで、サイバー攻撃力の能力が高まるだろう。また、国家指導のサイバーオペレーションを自国のリソースではなく中国以外の第三国でも行っている。

 SWIFT(国際銀行間金融通信協会)接続および認定情報の搾取という手口に金融サービス企業は警戒すべきであり、破壊的なマルウェア攻撃、DDoS攻撃や顧客の口座やデータを狙う北朝鮮のサイバー活動を監視すべきだ。政府と直結した防衛分野に携わり、特にはTHAAD(高高度防衛ミサイル)の配備を支える企業、および朝鮮半島で活動する米国や韓国は現地でのネットワークにかかる脅威環境が高まっていることに十分意識すべきである。

 北朝鮮に対して、非理性的で狂ったサイバー軍を抱え、単なる常軌を逸した国家と捉えるのではなく彼らの実情を理性的に分析すべきである。幻想を払拭(ふっしょく)すべきは北朝鮮側ではない。