今回の総選挙の意義 政治システムを現代的に

小選挙区制は時代遅れ

 10月22日に行われた総選挙の意義は、小選挙区=二大政治勢力政権選択型政治システムの見直しにある。このシステムは、既に時代遅れなのだ。

 1950年代のように、社会が富裕層と貧困層に二分されている社会ならば、このシステムも良い。だが社会が複雑化し、農民や自営業者もいれば医者も弁護士もいる。公務員もいる。大企業も中小企業もある。その中でも幹部社員も派遣社員もいる。その各々のニーズが、かなり違っている。年齢や学歴、住んでいる地方等でも、有権者のニーズは違う。

 このような社会で小選挙区=二大政治勢力政権選択型政治システムは、複雑なニーズに応えられず政治と社会を混乱させる。むしろ中規模政治勢力が複数ある政治システムの方が、複雑なニーズに応え易い。

 確かにフランスでは、比例代表制で中規模政治勢力が複数ある政治を行っていたら、政治が混乱した。そこで小選挙区制を導入し、政治を安定させた歴史もある。だが、それは50年代だったからだ。またフランスの制度は複雑で保守=左派双方に複数政党がある。

 小選挙区制の本家英国でも、中小政党が国政に進出し、連立を余儀なくされている。“分家”のカナダ、オーストラリアも類似した状況である。

 米国も民主、共和両党とも、三つくらいの違った政治勢力の連合体になってしまって“決められない政治”になり、トランプ大統領が困っている。

 日本人が民主主義の理想と考えるスウェーデンや戦後ドイツでは、比例代表制ベースの中規模政党分立型政治である。国民投票で決められるのは各政党の議席配分で、政権も首相も、プロの政治家が選挙後に駆け引きで決める。国民が直接、政権や首相を選ぶと言えない。

 だが複雑化した現代では、この方が国民の複雑なニーズに合わせ易いと思う。少なくともスウェーデンやドイツで、この制度を廃止し、小選挙区ベースの選挙制度に変えようという話はほとんど聞かない。

 米英型の国でも同様にした方が政治が安定し円滑に機能すると思う。日本も同様だ。

 かつての中選挙区は、お金が掛かり過ぎた。だが、自民党の派閥を政党と考え“自民党”とは連立政権の名前と考えれば、中選挙区制時代の方が、現代を先取りしていたのではないか?

中選挙区連記制の提唱

 昔の中選挙区でお金が掛かり過ぎた理由は中選挙区なのに有権者は1人1票しか持っていなかった、その1票の奪い合いで、そのような問題が発生していた。例えば定員3人の中選挙区で、1人の有権者が3票を持っている制度なら、この問題は緩和できる。

 この制度を導入すると、日本人独特のバランス感覚により、自民党に2票、希望の党に1票はおろか、自民党、希望の党そして共産党に1票ずつ投票するような人が、大量に出て来る可能性はある。だが、その結果が集約された国会の議席配分こそ、最も国民の複雑なニーズの表れなのだ。それに基づき、プロの政治家が政権や首相を決めるなら混乱も少ない。

 今回の選挙で希望の党が取った首相候補を決めない等のスタンスは、小選挙区=二大政治勢力政権選択型政治改革への問題提起になったと思う。そんな深い考えが彼らにあったかは疑問だが…。

 今回の選挙を契機に、一刻も早く小選挙区=二大政治勢力政権選択型政治に対する、抜本的な見直しが、行われるべきだ。それは米英さえが手本にしたくなる日本発の世界標準になるかも知れない。

 今回の選挙をめぐって多くの人々が持っている疑問には、実は今後の日本と世界の政治を左右する、重大な問題が背景にある。その本質を理解することが重要だろう。