北朝鮮の「核」威嚇 金政権崩壊を促すだけ


国際的に強い対北警告

 日韓米の当局は、北朝鮮が朝鮮労働党創建70周年記念日の10月10日に合わせて核・ミサイルで挑発をするだろうとの予想をしたが、杞憂に終わった。

 北朝鮮の挑発予告は、長年の閉鎖と孤立で窮地に追い込まれた金正恩(キムジョンウン)政権を安定させると同時に「強盛大国」の姿を内外に宣伝することで国内の結束を固めることを狙ったものだ。

 しかし、予告であれ、このような挑発が却(かえ)って政権崩壊を促す致命的な毒になることに目覚めてほしい。まずは、国連安保理が2013年1月の北朝鮮制裁決議で、ミサイル追加発射と核実験に対しては「重大な措置(significant action)をとる」という「トリガー条項」を置いたため、自動的に追加制裁に直面するという事実を忘れてはならない。

 北朝鮮は、最近の日米韓中露と国連を中心に緊迫の中で進んでいる一連の対応を冷静に把握し、このような挑発予告はやめるべきである。

 ジョン・ケリー米国務長官は9月16日、北朝鮮が4度目の核実験を示唆したことに対し「北朝鮮による核開発の脅威を断ち切るためには経済制裁以上の措置が必要になる」と述べ、致命的な手段の動員を強く示唆した。

 ケリー長官は、セルゲイ・ラブロフ露外相との会談でも北朝鮮を圧迫する経済制裁以外の手段を話し合ったことを明らかにした。超強硬制裁として「BDA(バンコ・デルタ・アジア)型の金融制裁」まで取り沙汰(ざた)されている。

 中国からも警告の声が強い。王毅外相は、6カ国協議共同声明の採択から10年となる9月19日、北京で開かれた記念セミナーで、「関係国はみな国連憲章を遵守する責任があり、国連安保理決議を守る義務がある」と強調した。王外相がこのように国連決議に触れたのは、北朝鮮が追加挑発をしたら国連決議に従って北朝鮮制裁に参加する意向を表したものと解釈される。

 また、国際原子力機関(IAEA)も北朝鮮の核実験脅迫に深い懸念を表した上、北朝鮮に国連安保理決議と6カ国協議声明の非核化公約を誠実に履行するよう求めた。IAEAは9月14~18日にかけて開かれた第59回総会で、北朝鮮に▲核増強政策の放棄▲6カ国協議声明および国連決議の義務履行▲核物質生産活動の全面中止などを促す決議を採択した。これは核実験を予告した北朝鮮に対する事前警告だった。

日本の制裁解除も疑問

 日本政府も北朝鮮の好戦性を警戒し、北朝鮮との交渉に慎重を期すべきである。現在進行中の日朝交渉は、北朝鮮側が拉致被害者再調査の報告に関する約束を守らないため一向に進まず足踏み状態が続いている。

 北朝鮮は、制裁解除というおいしいところだけを日本から取って、拉致被害者再調査の結果は出さずに怠っている。今回の挑発の脅しが日朝交渉においてもっと大きな利益を確保するための主導権を握ろうとする思惑ではないか疑わざるを得ない。

 日本政府は今回を機に、日本人拉致被害者の全員帰国の期限を決め、これを守らない場合、北朝鮮との交渉を撤回すると最後通告を出さなければならない。合わせて、北朝鮮政権を政治・財政の面で支えてきた朝鮮総連の犯罪行為も徹底的に捜査し全貌を明らかにしなければならない。

 機会さえあれば核実験や長距離ミサイル発射を言い出して国際社会を脅かす「地球上の厄介者」金正恩政権を取り除くことだけが北東アジア域内の平和と繁栄を築くことである。この事実を忘れないで日本をはじめとする周辺国が共に行動することを求める。