朝鮮総連の創設60年 遠くない弔鐘の鳴る日

犯罪や詐欺に反省なし

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が今年で創立60年を迎える。だが、深刻な資金枯れと、北朝鮮の核開発や反人倫的犯罪による国際社会の制裁で孤立を深め、お祝いムードに水をさしている。

 帰国事業は1959年から84年まで在日朝鮮人及び日本人妻約9万3000人を北朝鮮に移住させた事業で、北朝鮮と朝鮮総連による大規模詐欺事件だ。北朝鮮を「衣食住の心配がない」「地上の楽園」と偽り、彼らを生き地獄へ送り込んだ。帰国者は全財産を奪われた上に集中的に監視され、体制批判をすれば、突然一家族ごと行方不明になったり、政治犯収容所に収監されたりもした。

 金正日は2002年9月17日に行われた小泉純一郎首相との平壌会談で日本人の拉致事件を認め謝罪した。「北朝鮮の工作員に日本語や文化を教え、日本人になりすますため拉致した」と白状した。朝鮮総連は、金正日の支持を受け拉致対象者を物色するなど、日本人拉致に関与してきた。

 日本人の被害者の中でも特に反響を呼んだのは大韓航空機爆破犯の金賢姫(キムヒョンヒ)に日本語を教えた田口八重子氏と、1977年新潟で拉致された13歳の横田めぐみ氏だ。ともに死亡したとしているが、北朝鮮が横田氏の死亡証拠として提出した遺骨はDNA鑑定により偽物だったことが分かり、日本中を驚かせた。

 北朝鮮は2014年4月末にストックホルムで拉致者問題の再調査に同意し、15年5月まで交渉を行ったが、依然として進展がみられない。日本側が把握している拉致被害者17人のうち5人だけが02年に帰国しただけだ。あと8人の被害者はすでに死亡し、4人はそもそも入国した記録がないと北朝鮮は主張していることから、拉致問題の解決に対する北朝鮮の狙いが窺(うかが)える。

 一方、朝鮮総連は北朝鮮の前哨基地として、韓国の体制を転覆させるための役割を果たしてきた。もっとも衝撃的だったのは1974年の文世光(ムンセグァン)(当時23歳)による大統領暗殺未遂事件だ。朴正煕(パクチョンヒ)大統領を狙った銃弾は逸(そ)れて、代わりに夫人を射殺した。取り調べの結果、文が朝鮮総連の指令を受けて朴大統領を狙ったテロであることが明らかになった。

 朝鮮総連は発足後から現在に至るまで、在日企業家や朝鮮人からの金日成一家への忠誠資金の調達に没頭してきた。日本政府は今年4月13日に北朝鮮への経済制裁措置を2年間延長する方針を固めた。また、北朝鮮産マツタケを不正輸入した疑いで日本警察は許宗萬(ホジョンマン)議長の家宅捜索を行い、許議長の次男と総連傘下企業の社長を外為法違反(無承認輸入)容疑で逮捕した。

 東京都千代田区の朝鮮総連本部ビルは過度な借金のため差し押さえられたが、再び北朝鮮の資金で取り戻したという疑いが浮上している。これは国連の対北制裁違反であるため、日本の市民団体が政府による調査を求めている。

金一家への忠誠だけ

 現在、朝鮮総連には過去の反省も、未来へのビジョンもない。子孫に教育していることは「民主主義」でも「市場経済」でもなく、金一家への限りない忠誠だけである。つまり世界で活躍できない井の中の蛙(かわず)を育ててきたわけだ。

 朝鮮総連にはおよそ10万人の人々を「帰国」させた責任があるが、彼らを救うための努力も謝罪もしていない。送られた者のみじめな生活を知りながらも、ひたすら知らないフリをしてきた。

 さらに、最近話題の「恐怖政治」のことは一切報道も批判もしていない。アジアの平和と安定を破壊する北朝鮮の核開発については盲目的に支持している。朝鮮総連は創立60年を迎えたが、その本質は何も変わっていない。このままでは朝鮮総連の「弔鐘が鳴る日」も遠くはないだろう。