第3次安倍内閣への期待 逞しい経済力と国防力を

経済と軍事抑止力強化

 今回の衆院選挙で自民党が圧勝した。当選議員数は自民291・公明35で与党(自公)326が70%弱を得た。圧勝の主因は、金融緩和・財政出動・成長戦略の3本の矢の「アベノミクス」による「強い日本経済回復」と「国防力強化」に対する国民の支持で、国民は「逞しい日本経済と逞しい国防力」を期待する。軍事・経済覇権大国として台頭する「反日的中国」に対する日本の国防強化には世界最強の米国との緊密な団結が必須で、安倍政権が計画する集団的自衛権と敗戦国日本が占領軍命令で作成した憲法の改正は当然の政策である。

 日本の経済力をGDP(名目)総額で診ると、人口が全世界の僅か2%の日本は80年代から2010年代末まで米国に次ぎ世界2位で1人当たりGDPもスイスに次ぎ2位。正に「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」だった。しかし、近年、外国直接投資を土台に驚異的速度で台頭した中国がGDP2位国になり、1人当たりGDP(2013年米ドル。国連IMF推計)も日本は世界24位に落ち、OECD加盟国の19位に落ちた。本稿でその主因考察の字数は無いが、各国の経済顧問を務めたL・サローMIT名誉教授は「景気対策が世界で最も下手な国という賞があれば日本は必ず受賞する」と厳評する。また、アベノミクス高評価者のノーベル賞経済学者P・クルーグマン(プリンストン大教授)は、消費税8%増を「残念な愚策。過去の教訓から消費税10%増計画は日本経済を不況に逆転させ再度の浮上は不可能では?」と警告。彼は消費税は5%に戻す方が賢明とする(事実、8%増税後の税収は逆に大幅減少)。また、前政権時代の円高で諸企業の拠点が国外に移転したので大幅な円安化でも輸出増は鈍いが、大手企業の海外資産と政府の外貨債権は円換算で増益。しかし原油安の恩恵はあるが、輸入物価高で庶民への悪影響が昂進。幸い安倍政権は問題を理解し、消費税10%増は予定より1年半延期、法人税35%を漸次20%台に減税、賃上げ要請、地方活性、人口減抑制策などの諸対応策を打ち出した。

 逞(たくま)しい経済力の回復に併せて、強力な国防力(軍事紛争抑止力)は必須である。中国の力による南アジア海域の領有化、尖閣諸島での挑発、漁船大群による小笠原諸島の珊瑚(さんご)密漁、アジア太平洋諸国の中国経済圏化などは日米の対応力診断で、今後、日中鍔(つば)ぜり合いの激化が予見される。P・クルーグマンも日中軍事紛争を警告する。

財政赤字削減の知恵

 問題はGDPの2・2倍の国債発行による先進国最大の赤字財政改善の資金調達である。民主党が選挙で自民党政権に圧勝したのは、自民党時代の道路・ダム族による膨大な血税使用の公共事業に対する国民の怒りで、民主党の「事業仕分け節税」公約への強い期待だった。しかし、その「事業仕分け公約」挫折への失望が、自民党圧勝に逆転した。安倍新政権への期待は正に非緊急公共事業の廃止や国会議員定数の削減などの節税断行を含む経済力回復で、この期待に反して増税や年金削減だけがあれば安倍政権の支持は暴落必至と予見する。

 一方、日本の財政は消費税増延期でも改善可能という論もある。2014年の消費税8%増で消費と景気が落ちて約3兆円の税収減の由。現在の円安で輸出増はまだ少ないが、海外投資収益を含む大手企業収益は円換算で大幅増加。政府の外貨債券(約100兆円)も含み収益が大幅増で、これで国債残高を大幅削減できる由。事実ならば、その実施が増税前に必要である。