世界連邦運動は進む 国会決議や国連に助言
世界連邦実現の必然性
小山常実氏の論考(世界日報2014年10月23日付)に「世界連邦構想(幻想)」「世界連邦構想の現実性はとうの昔に消えている」と書かれている。幻想ではなく、消えてもいない。国会決議成立にまで進んでいる。
国連を改革強化して、連邦制と補完性を原則とする世界法治共同体にし、世界課題に対応する仕組みが世界連邦である。世界全国の軍と兵器を無くし、世界警察と各国警察の協力で世界の安全を保つ制度で、核兵器廃絶も完全にできる仕組みである。日本には、その「世界連邦実現への道の探究に政府は最大限の努力を」と求める国会決議があり、その国会決議に基づいて日本政府が、平和づくり外交を進めるようにと、運動が進められている。
人類の平和維持の仕組みは、交通・通信の拡大につれて部族から民族国家へ、国民国家へ、連邦国家へと拡大してきた。今や、世界は世界連邦という一つの世界に向かう。それは国連成立(1945年)後間もなく、明確な人類の意識になった。47年、第2回国連総会にアインシュタインが[真の世界政府]を生み出すべしとする公開状を送った。47年8月には世界連邦政府のための世界運動がスイスで「モントルー宣言」を出し、世界連邦の6原則を明らかにした。48年3月には、ロバート・M・ハッチンスを委員長とする起草委員会が「世界憲法シカゴ草案」を発表した。残虐で大量・無差別な殺傷・破壊を伴う核兵器の出現を見た人類は、その核兵器を廃絶し、人類の平和を維持するには、世界が不戦・非武装で秩序を保つことができる世界連邦実現のほかに道はないとする人類進化の必然を確信したのである。その事情は現在も、いささかも変わっていない。
国連改革は延びに延びて今日に至り、その間に人類の人口は3倍半の70億に達し、その活動で、地球環境の変化をもたらし、気候変動による災害は、増加の一途をたどっている。兵器の拡散により、部族や宗教各派の対立・抗争の悲惨が増え、今や、戦乱と地球環境の二大崩壊に人類は直面し、世界連邦政府樹立による人類一致の対応が焦眉の急になっている。
尾崎行雄は、45年12月に日本の議会に「世界連邦建設に関する決議」案を提出した。占領下のためその案は決議されずに終わったが、世界連邦国会決議は日本の世界連邦運動の悲願であった。この悲願は、日本全人口の8割を超える自治体の「世界連邦平和自治体宣言」を背景として、世界連邦日本国会委員会が提出した国会決議案となり、他の二つの案と合流し、05年8月2日の衆議院本会議で議決された。それには「政府は世界連邦実現への道の探究に最大限の努力をすべきである」と明記されている。
推進組織が世界的運動
世界連邦は上記の如く、国権の最高議決機関である衆議院で、議決しているのであるから、日本国自体が世界連邦を推進する組織であるということができる。この事実は人類進化に巨大な意味を持つ。
その日本の世界連邦推進組織の現状は、世界連邦推進日本協議会・会長海部俊樹の下に、世界連邦運動協会・会長海部俊樹、世界連邦日本国会委員会・会長横路孝弘、世界連邦宣言自治体全国協議会、世界連邦日本宗教委員会、世界連邦日本仏教徒協議会、世界連邦文化教育推進協議会があり、毎年原則として、世界連邦日本大会を実施している。
世界連邦運動協会は、50余の支部を持ち、各地で世界連邦思想の啓蒙(けいもう)に当たり、本部はほぼ毎年、外務省の総合外交政策局を窓口に、政府に政策提言を行っている。世界連邦日本国会委員会は49年以来の超党派の議員連盟で、参議院別館に事務所を置き、10の政党から99名の議員が参加している(14年6月30日現在)。
世界の世界連邦運動(WFM)には日本の世界連邦運動協会をはじめ15の加盟団体と12の連合団体があり、国連に助言する任に当たっている。現会長はロイド・アクスワージー(元カナダ外相)である。世界連邦は速やかに実現すべき人類直近の課題となっている。(敬称略)