人口減少と経済・国防 悪循環を阻止する改革を

既に人手不足が深刻化

 本紙の『オピニオン』(3月14日号)の拙稿『人口減少と安全保障』で、日本の人口急減傾向による経済・国防問題と外国人雇用拡大を提言したが、その後、各紙・テレビ報道で、日本の人口減と経済安保の懸念が毎日のように論じられている。

 超深刻な問題なので当然だが、同『オピニオン』で紹介した日本とアジアの人口減と日本の経済・国防の問題を3年前に警告した原田泰(大和総研専務理事・現早大教授)と長谷山雅巳(同エコノミスト・現大和投資信託)による『週刊エコノミスト』(2011年2月~3月)の先駆的4論文を改めて評価したい。

 6月下旬に政府が閣議決定する『経済財政運営の基本方針』では、デフレ脱却と経済再生の次の最大課題が『人口減問題の克服』である。国立社会保障・人口問題研究所の予測では、日本の現在の総人口約1億2800万人弱は2050年頃に1億人を割り2110年には約4286万人(現在の約33%)に激減する。

 実際には、この人口減趨勢(すうせい)を変える対策と要因が生まれると期待するが、政府は2020年迄に人口急減傾向を変えて、50年後も人口1億人を維持し、人口減と経済萎縮の悪循環阻止で、少子高齢化対策の強化と合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生む子供数)を2012年の1・41(OECD先進諸国よりも低い)を人口維持に必要な2・07以上にする計画である。

 その方策は①女性が出産後に育児をし易い社会保障と税制の改革で国家予算を出産と育児・教育支援に重点配分②第3子以降の出産と育児を支援③保育士資格者の雇用拡充で待機児童を削減④男性も育児の余裕が持てる勤務体制――などである。必須の改革と対策だが、その財源と人手不足が心配である。

 即ち、生産年齢人口(15歳~65歳未満)は1995年以降約1000万人減で人出不足が既に生じている(東京オリンピックの2020年には約1400万人減を予測)。特に東日本復興事業、各種の産業活動、医療・福祉事業などの人手不足の深刻化が報道されている。

 また、少子高齢化で公的年金資金が枯渇するので、年金保険料支払いを65歳まで延長し、年金支給年齢の70~75歳案が検討されている。その他、各種の学校・教育・研究機関、各種企業、病院医療施設などの統合廃止、各種交通機関運行数の減少、市場の縮小等による経済活動萎縮化の昂進(こうしん)という経済の連鎖的悪循環が懸念される。

 企業と国防・警察を含む政府機関の活動も縮小し、人口減阻止の上記の諸政策に必要な国家予算の調達が不可能になる。

 外国人雇用の拡大は諸問題はあるものの当面は不可欠だが、日本経済が萎縮化すれば日本での就職を希望する外国人の有無が懸念される。

人に代わる国防強化を

 以上は人口減と経済安保の要旨だが、特に留意を要する国防問題の論議がまだ少ない。最近の中国の対日挑発行為、防空識別圏設定、東シナ海と南シナ海での強引勝手な行為が拡大している。

 中国は『外交力は軍事力』(ビスマルク宰相の名言)の典型的国である。尖閣有事の場合、局地戦では装備と技術に勝る日本の勝算が予見されているが、全面戦になれば核保有中国に譲歩せざるを得ない。前回の拙稿提言と重複するが、米国救援の過信は禁物で自主防衛力の強化、日本版『外人部隊』の創設と国産核装備か核攻撃力装備の米軍原潜の日本周辺近海常駐遊弋による『戦争抑止力』を、暴論との批判覚悟で提唱し、人に代わる産業用と軍事用のハイテクロボットの開発強化を提言したい。