米国も力の対外政策を、問われる同盟国防衛の本気度
イージス艦の追加配備
自民党は集団的自衛権行使容認に向かうべく憲法解釈の変更に慎重派もほぼ同意したようだ。時を同じくして訪日したヘーゲル米国防長官も小野寺五典防衛相との会談で、この問題での日本政府の努力に強い「支持」を表明、さらには米軍イージス艦2隻を日本へ追加配備することを約束した。
こうした米国の姿勢は表向き「対北朝鮮ミサイルのため」だが、核心は対中戦略にあることは明らかだろう。
オバマ米政権は外交的誤りの修正に動き始めたといっていいのではないか。オバマ政権の第一義的な外交戦略はイラク、アフガニスタンから米軍を引き揚げることだった。また同政権は対話外交によりイランの核開発を制止できると踏んでいた。オバマ氏流の浅薄な理想主義がそこに反映されている。
昨年、シリアのアサド大統領が化学兵器を使い一般市民を虐殺した。9月、オバマ大統領はシリアへの軍事介入を表明したが、結局は言葉だけで終わった。その後、ロシアのプーチン大統領に指導権を完全に奪われてしまった。
問題の焦点は、アサド独裁政権が市民を14万人も虐殺し続けており、その上、サリンガスまで使い始めたことだった。オバマ大統領は責任逃れで議会に軍事介入への支持を取り付けようとしたが、その間にロシアはアサド政権に対し「米国ではなく国連」が化学兵器の処理をすることに同意させた。米国はそれを受け入れることで反政府勢力と市民を見放したのである。
結果として化学兵器処理は進んでいない。プーチン大統領からすれば、「オバマ大統領は軍事力を行使してでも虐殺される市民を保護する決意も能力もない」と結論付けたのも無理はない。
一方、オバマ大統領は自ら「米国は世界の警察官たりえない」とまで言った。このことは米国が世界に非常に誤ったメッセージを発することとなった。何よりも自信を持ったのはプーチン大統領のロシアであり、その後のロシアが、いわば”先祖がえり”を決断する契機となったといえよう。
その延長線として起こった事件が、ロシアによる「クリミア併合」だ。現在、ウクライナ東部国境には3~4万人の精鋭ロシア軍が配置され、ウクライナ国境を越えようとしている。これは明らかに「力による現状変更」であり、国際法に違反している。米国や欧州各国は反発し、G8(主要国首脳会談)をボイコットするなど外交的には強い姿勢を打ち出した。
「クリミア併合」は中国の領土的野心を刺激し、海洋進出を加速させかねず、我が国の尖閣諸島の緊張も増す。これを教訓に、オバマ米政権はイージス艦2隻を日本へ追加配備をすることが「対中国抑止力となる」と考えたのだろう。
自ら国を守る決意を
しかし、それは不十分だ。中国の習近平政権はプーチン大統領と同じ視点でオバマ政権を見つめている。米国の兵力の配備・展開そのものではなく、実際に軍事力を行使する決意があるかどうかに注目しているのだ。
わが国はオバマ政権の未熟な理想主義に自国の運命を預けるわけにはいかない。尖閣をはじめ日本に関わる有事の際、米国が毅然(きぜん)として日米安保を発動させるよう、ふだんから両国が緊密な防衛協力と強い信頼関係を構築しておかねばならない。
日本政府の確固たる決意と行動があれば、米国内の保守勢力や議会が、対中強硬姿勢を躊躇(ちゅうちょ)するオバマ政権を突き動かすだろう。米軍の本格介入はその後になるのではないか。日本が自らを守る決意なくして、どうして米国が自国の青年を犠牲にして日本を防衛しようとするだろうか。