賃上げ春闘と共産党労組 国民惑わす「大幅アップ」
未だストライキ戦術
いよいよ春闘が大詰めを迎えている。春闘とは、春季闘争の略で日本で毎年春頃に行われる労働条件の改善を要求する会社側と労働組合との団体交渉のことである。いっせいに団体交渉が行われるのは主要な国では日本だけで、まず、大手企業で賃金交渉が行われ、次いで中小企業へと移り、最後に労働組合のない企業の賃上げ額が決まる 。
今年の春闘でも例年のように、日本共産党とその影響下のナショナル・センターである全労連(全国労働組合総連合)が賃金の大幅アップを訴えている。全労連の組合の中にはストライキ戦術をとっているところもある。全日本金属情報機器労働組合日本IBM支部は6日、ストライキを実施した。13日の全労連統一行動では、250カ所以上でストライキに突入した 。
冷戦構造が過去のものとなり、自民党や財界が中国共産党と交流し、同じ共産主義政党である日本共産党に対する警戒感がうすれ、逆に日本共産党に期待すら持つ国民までいる。私は、日本共産党の「大幅アップを」との賃上げの訴えに国民がだまされるのを危惧し、以前にもまして日本共産党への批判を強めていかなければならないことを訴えるものである。2日に行われた埼玉県川口市での県議会議員補欠選挙でも日本共産党候補がみんなの党の候補をわずかの差でかわして2位となり当選した 。
今年、好景気の中、自民党安倍政権も財界も企業に賃金引き上げを要求した。連合(日本労働組合総連合会)も強く賃上げを求めた。連合のベア(ベースアップ、基本的に昇給のこと)要求は5年ぶりのことであった。そして実際、多くの企業が社員の給与を数千円など引き上げた 。
しかし、日本共産党は、連合が経団連とたたかうことなく少ない賃上げで妥協したとして批判を強め、企業内部留保があることを持ち出して大幅な賃金アップを訴え、国民の共感を得ようとしているのである。特に「負け組」が、日本共産党に取り込まれることが危惧されている。「努力しても何も変わらない」という左翼論陣の主張が後押しをしている 。
春闘が様変わりし、昇給額を決めるものから、広く国民の生活改善を求める運動へと変わったことも影響している 。
もともと、毎年の全労連系労組の賃上げアップ要求は相手にされてこなかった。実現不可能な金額だったからである。昨年も日額8000円以上とか月額1万6000円以上を要求していて、常識的な人々から見向きもされなかった 。
しかし、労働戦線に異変が起きているのも事実である。広島県では15日、連合傘下の私鉄広島電鉄支部のデモを広島県労連が支援した。印刷通販最大手プリントパックでは若者により労働組合が結成された。
革命綱領の本質不変
4月からの消費税値上げも日本共産党への追い風となる。国民の中には減速しつつある日本の将来に対して、日本共産党に希望を持ってしまう人も出てきてしまうかもしれない。来年春の統一地方選挙で大幅に日本共産党が議席を増加させたり、何らかのアクシデントで政権交代が起き、日本共産党が参加するような政権が誕生してしまったら大変である 。
なぜなら、日本共産党は1月に開催した全国大会で共産主義革命をめざす綱領をまったく変更していない。共産主義社会はユートピアであるとの主張に変りはない。このような特殊なイデオロギーを持つ日本共産党が、いくらスマイル路線を強めようとも本質は変わらないので、いつ牙をむくかわからないのである 。
日本共産党系労働組合のスマイル路線にだまされてはいけない。彼らは、労働者階級の(共産主義社会実現という)使命を信じていて、特殊な綱領を持つ。すべての道徳や価値観、愛すら認めずに、プロレタリアヒューマニズムという特殊な価値観のみ信じる 。
ところで、日本共産党が本質をむき出しにしてきた。これまで大きく宣伝していた『自由と民主主義の宣言』をすみに追いやった。全国大会決議でも、自由や民主主義は普遍的な価値観ではなく西欧のものであると主張している。日本共産党知識人の間では「民主主義では解決できない問題がある」との発言が増えている。このような日本共産党が労働戦線で勢力を拡大しないように批判を強めていかなければならない。