石門・陵墓など、世界遺産としての首里城に光を


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 首里城の火災で、正殿、南殿、北殿など7棟が焼失した。また、首里城を管理運営する沖縄美ら島財団所有の文化財1510点のうち、正殿などの常設展示品421点が焼失した。火災後、初めての週末となった2日、首里城周辺では多くの地元の人々や観光客が変わり果てた首里城の姿をカメラやスマートフォンに収めていた。

 首里城公園の玄関口にあり、2千円札に描かれている守礼の門は火災を免れ、これまでと変わらず、記念撮影をする人であふれている。門をくぐると、左手に園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)がある。

 ここは神への「礼拝の門」、国王の外出時に安全祈願をした礼拝所。1519年に造られたが沖縄戦で消失し、再建されたもので、2000年(平成12年)に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一つとして、首里城跡などと共に世界遺産に登録された。

 ところが、観光客たちはその石門を踏み台にして焼け落ちた首里城正殿方面を撮影しており、誰も注目していなかった。

 守礼の門から西に延びる道路の先にはもう一つの世界遺産がある。玉陵(たまうどぅん)、すなわち、第二尚氏王統の歴代国王が葬られている陵墓だ。ここもあまり注目されておらず、ほとんどの観光客は立ち寄らない。

 県の観光当局は1日、緊急会議を開き、火災で自粛ムードになることなく、改めて沖縄の歴史や文化を考える機会にしてもらえるようにアピールしていくべきということを確認した。文化財の1000点余りが焼失しなかったことは不幸中の幸いだ。

 首里城公園内には上記の二つの世界遺産をはじめ残っている施設もあり、模型の展示などもある。朱色できらびやかな正殿の姿はないが、首里城や沖縄の歴史を学べる場であることに変わりはない。

(T)