ゴーン被告に同情の声なし
地球だより
大革命で王政を廃止したフランスだが、中身は違っても階級社会は続き、今でも富裕層への富の集中度は、英国をしのぐとも言われている。そんなフランスでは、常に富裕層に対する一般市民のネガティブな感情が渦巻いている。
典型的なのが、約1年前に東京で身柄を拘束された日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の3社連合を率いていたカルロス・ゴーン被告への反応だ。
大手IT企業の営業部長、自動車メーカー中堅幹部、女性経営者、30代のサラリーマン、製造業の技術者、学生らに話を聞いたが、驚いたことに誰一人として、ゴーン被告に同情していなかった。
身柄拘束や妻との接見禁止などが、人権侵害に当たると批判されたことについても、「逮捕された国の司法に従うのは常識だ」「先進国である日本の司法のやり方が間違っているなど到底言えない」という意見が大半を占めた。
50代の精密機械メーカーの部長の男性は「妻がマクロン大統領やトランプ米大統領に夫の待遇改善を交渉しようとしたことに、多くのフランス人は激怒した。何様だと思っているのか。自分は特別だという考えこそ、フランス人が最も受け入れられない考えだ」と怒りをあらわにした。
実はフランスの富裕層は米国と違い、リッチな暮らしを見せびらかすことはない。映画スターでも資産は公表されていない。プライベートなことだという理由だけでなく、著名人の裕福な暮らしは一般市民のひんしゅくを買う恐れがあるからだ。
(A)