かりゆしウェアの苦い経験


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 6月1日は「かりゆしウェアの日」。この日を境に、沖縄県内では多くのビジネスマンがかりゆしウェアを着用する。

  6月最初の閣議においても、閣僚全員がかりゆしウェアを着用して臨むのが恒例だ。安倍首相や菅官房長官、宮腰沖縄北方担当大臣は、先月、玉城デニー知事から贈られた「かりゆし」を着用していた。安倍首相のものは、落ち着いた灰色のデザインの中にミンサー織が散りばめられた長袖かりゆしだ。

 贈呈されたかりゆしウェアは一点物の高級品である。1万円を超えるのがほとんどでシャツとしてはかなり高値だ。会社役員や政治家に着用している人が多い。「すてきなかりゆしですね」と社交辞令でほめることはよくある。一般社員レベルになると、大量生産される廉価品を着用するのが一般的だ。

 ただ、そうなると、自分と同じデザインのものを他の人が着ている確率が増える。特に、選挙パーティーなど大人数が集まる場所に行くと、同じかりゆしウェアに遭遇する確率は高い。同じウェアの人が近くにいるとなぜか気まずい思いになる。

 筆者にとっての苦い思い出は、鳩山由紀氏が首相時代、自分の持っているものと同じデザインのかりゆしウェアを着用していたことだ。普天間飛行場(宜野湾市)の移設先を「最低でも県外」という公約を破った鳩山氏が、謝罪に追われ、県内で怒号を浴びていた時に着ていたかりゆしウェアはシーサーがデザインされたカジュアルなもの。値段も手ごろだ。

 鳩山氏は庶民派をアピールしようとしたのか、誰の助言も借りずに自分自身で購入したのかは定かではないが、まさか、首相が廉価品のかりゆしウェアを着用するとは夢にも思っていなかった。それ以来、そのかりゆしウェアを手放した。

(T)