沖縄に寄り添われる陛下


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 「昭和47年に沖縄の復帰が成し遂げられました。沖縄は、先の大戦を含め実に長い苦難の歴史をたどってきました。皇太子時代を含め、私は皇后と共に11回訪問を重ね、その歴史や文化を理解するよう努めてきました」

 来年4月末の退位を控えて、最後の天皇誕生日の祝日を迎えられるに当たり、天皇陛下が、皇太子時代から現在までの歩みを振り返られた。常に「国民の安寧と幸せ」を祈っておられる陛下だが、中でも、先の大戦を踏まえた平和への思いと沖縄に対する並々ならぬお気持ちを吐露された。

 23日、那覇市で開かれた「天皇誕生日を祝う沖縄県民の集い」(皇室崇敬会主催)で基調講演した所功・京都産業大学名誉教授は、「約20分間の会見で、沖縄に触れられたのは全体の文脈からしても格別」と評した。天皇皇后両陛下は全国の都道府県は2回は行幸啓されているが、10回を超えるのは京都を除けば異例の多さとなる。

 なぜこれほどまでに沖縄に寄り添ってくださるのか。所氏は、「昭和天皇が病に倒れ沖縄訪問がかなわなかったことで、父親の務めを代わりに果たそうとされるお気持ちが強い」と指摘。さらに、沖縄戦では学童疎開船「対馬丸」が米軍に撃沈され、ご自身と年齢が近い子供たちが犠牲になったことも、沖縄への思いを強める理由と推測する。

 また、同氏は「全国各地に出掛け、人々の傍らに立たれ、その苦しみ悲しみをご自身の思いとするだけでなく、学ぼうとされている」ことに感銘を受けたと話した。

 「陛下は秒単位で忙しいにもかかわらず、一人ひとりに関心を寄せられ、地方公務は減らしていない」と所氏。天皇家の家系であることに加え、自ら学び経験された後天的な要素が、陛下の個性だと解説した。

(T)