百田発言と豊見城市議会
沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)
自民党議員による勉強会「文化芸術懇話会」で自民若手国会議員や作家の百田尚樹氏が報道機関に対して圧力をかける発言をしたとされる問題で、沖縄では琉球新報と沖縄タイムスなどマスコミを中心に激しい抗議が続いている。
沖縄県議会は2日、報道機関への言論弾圧と県民侮辱発言に関する抗議決議を賛成多数で可決した。2紙は同日、日本外国特派員協会と日本記者クラブで会見し、編集局長2人が「言論弾圧は危険」だと訴えた。
また4日には、県議会与党などが「言論の弾圧と沖縄歴史の歪曲(わいきょく)を許さない! 言論・表現・報道の自由を守る県民集会」を那覇市で開催。2紙はこれらを多くのページを割いて紹介した。
県全体が2紙の論調にあおられている中、豊見城(とみぐすく)市議会は至って冷静な判断を下した。
同市議会は6月30日の定例会最終本会議で、この発言問題について「民主主義根幹の表現の自由、報道の自由を否定する暴論に抗議し、発言の撤回と謝罪を求める決議案」を賛成少数(賛成10、反対12、退席1)で否決した。
保守系の宜保(ぎぼ)晴毅(はるき)市長を支える与党内では、「メディア批判までも抗議対象にすべきではない」「沖縄の新聞2紙が公平な情報を発信しているとは言えない」「百田氏にも言論の自由がある」という意見が出たという。
なお、同市議会の決議については沖縄タイムスしか報じていない。琉球新報から沖縄戦に関する連載掲載を途中で一方的に拒否されたノンフィクション作家の上原正稔(まさとし)氏は、「沖縄のマスコミは都合の悪いことは報道しない自由を行使している。騒げば騒ぐほど国民は偏向報道に気づくだろう」と述べた。(T)