陸自那覇駐屯地の成人式に初めて市長ら祝辞


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 陸上自衛隊第15旅団は1月15日、那覇駐屯地で新成人の隊員を祝う式典を開催した。同駐屯地で年度内に満20歳を迎える隊員は85人、沖縄県出身者は39人で約半数を占める。

 式典には訓練などのない41人が参加。15旅団が拠点を置く那覇市、沖縄市、南城市、八重瀬町の首長が新成人にビデオメッセージを寄せた。また、うるま市長は祝電を送った。

 15旅団によると、首長が自衛隊の成人式にメッセージを寄せるのは、1972年に那覇駐屯地が置かれて以来、初めて。

 沖縄では日本復帰の前後に、日教組(日本教職員組合)を中心に左翼思想が本土から入ってきた影響がある。77年、革新市政だった那覇市は自衛隊を「招かれざる客」と称し、自衛官の成人式参加を拒んだ。その後も左翼団体が隊員の成人式参加に抗議したり、自治体が隊員の転居手続きや子供の学校入学を拒否するなど、さまざまな差別を受けてきた。

 こうした歴史を踏まえ、陸自は駐屯地の成人式で首長に招待状を送ってこなかったが、今回初めて招待状を送ったのだ。理由の一つに、「新成人の自衛官に、地域との関わりの意識を持ってほしいという思いがある」と、ある自衛官は明かす。

 那覇駐屯地は、不発弾処理や離島の緊急患者空輸で県民には必要不可欠な存在だ。自衛隊協力団体の幹部によると、「かれこれ20年は目立つ反対運動はない」という。

 昨年、うるま市と沖縄市で発生した豚熱には自衛隊が出動し、殺処分などの厳しい仕事を担当。新型コロナウイルス感染でも、昨年4月と8月に災害派遣要請を受け、今年1月29日にも医療支援のため宮古島に派遣された。

 幹部自衛官は、「自衛隊と地域は日頃から連携し、県民は理解してくれている」と話した。

(T)