沖縄かまぼこ「チキアギ」が「さつま揚げ」に


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 沖縄本島南部にある糸満市の漁港近くの市場がこのほど、改装された。糸満に行くと食べたくなるものの一つに、かまぼこがある。

 沖縄かまぼこは、板についている半円筒状のものとは異なる。油で揚げたもので沖縄の方言で「チキアギ」と呼ばれる。正月や旧盆などのお供え物の重箱に欠かせない。

 棒状のものやカステラ状のものが定番だ。ニンジンやゴボウ、ヨモギなどの野菜やモズクなどの海藻が入ったものは、それだけで立派なおかずになる。

 そのまま食べても十分美味(おい)しいが、沖縄そばに入れると、見た目もよくなり、味にアクセントが加わる。ゴーヤーチャンプルーなどの炒め物に入れれば味わい深くなる。漁師の街・糸満市では、かまぼこの中にご飯を入れた「バクダンおにぎり」が定番だ。ゆで卵が入ったかまぼこもある。

 沖縄かまぼこは鹿児島名物のさつま揚げと同じものだが、実はそのルーツは沖縄にある。薩摩藩11代藩主の島津斉彬の時代に琉球との交流が深まり、琉球から伝えられた中国料理の揚げる技法が古来からのかまぼこ製法に加わって、現在のさつま揚げができたという説が有力だ。

 琉球の「チキアギ」がなまって鹿児島では「つけあげ」と呼ばれたという。島津藩が品質向上を奨励したこともあって鹿児島県内に専門店が増え、今では全国にその名をはせている。

 一方、沖縄かまぼこは土産物としての知名度はまだまだ足りない。コロナ禍で観光客が激減し、魚の売り上げもかなり落ち込んでいる。

 かまぼこは魚が原料で、たんぱく質、脂肪、ビタミンなど体に必要な栄養素が多く含まれている。近年、若い世代の魚離れが進んでいるだけに、手軽に摂取できる栄養源として消費拡大が進むことを期待したい。

(T)