100万部割る「赤旗」購読数 野党共闘でも衰える党勢
第7回中央委員会総会で「目標」が最低に
共産党の場合、機関紙「しんぶん赤旗」日刊紙・日曜版の読者数全体を発表するのは党大会だ。その党大会を前に、同紙8月29日付で日刊紙・日曜版の読者が100万部を割ったと公表したのは異例だった。
党財務・業務委員会責任者、岩井鐵也氏の署名文書「『しんぶん赤旗』と党の財政を守るために」で明らかにしたもので、「8月1日の申請で100万を割るという重大な事態に直面し」たという。
岩井氏は、「この後退が『しんぶん赤旗』発行の危機をまねいている」と同時に、「赤旗」の事業収入は「党の財政収入の9割を占めるという決定的」な財源であり、「党財政の困難の増大そのもの」と叫んだ。
その危機感が、15日に開いた第7回中央委員会総会(7中総)が載った16日付からはさほど伝わらない。一般マスコミでクローズアップされた志位和夫委員長が語った「危機的」の文字より、「共闘の時代」を大見出しに取り、「れいわ新撰組」との党首会談に触れながら相変わらずの野党共闘を打ち鳴らした。
共産党は2011年9月に「毎月2億円の赤字」を計上していた「赤旗」日刊紙の購読料を月2900円から500円値上げして3400円にしたが、その際に日刊紙部数は24万部と公表した。500円値上げして26万部に増やせば採算が取れるという説明だった。
その1年前の10年党大会では日刊紙・日曜版で145万部と報告。これに比し14年党大会では日刊紙が87・5%、日曜版が85・0%になり、合わせて124万部に減少。次の党大会に向け日刊紙50万、日曜版200万の目標を掲げた。
が、17年の前党大会でも減らして、日刊紙・日曜版で113万部だった(党員は30万人)。それが19年8月に100万を割った。内訳は日刊紙10万部台、日曜版80万部台だろう。党員は7中総で28万人と報告された。なお、日刊紙は14年5月に3497円に、日曜版も今年1月に月823円から930円に値上げした。
7中総の拡大目標は、党員、日刊紙・日曜版とも「前大会時の回復・突破」で、小池晃書記局長は「最低限の目標ではないか」と述べている(9・16)。日刊紙50万、日曜版200万を掲げた14年党大会とは打って変わった最低の目標だ。その間のもう一つの変化が野党共闘路線だった。
契機となった安保法騒動で野党共闘を仕掛け、「赤旗」は他野党候補を応援する宣伝紙になり、共産党員も他野党候補の応援団になった。16年参院選では民進党と初の共闘で注目され、比例区で600万票を超えたが、17年衆院選で伸び悩み、今夏参院選は448万票だった。党員、機関紙の日刊、日曜版、全てで後退したことは党勢が伸びる共闘ではないということだ。
もともと共産党の党勢拡大は、「革命ロマン」で青年層を扇動し、唯我独尊の前衛党路線で党機関紙拡大を軸に展開するものだった。1960~70年代に勢いを増し、85年に「赤旗」は日刊40万部、日曜版315万部のピークを記録した。
その後の部数減少について7中総で志位氏は、80年に共産党と革新共闘を組んでいた社会党が公明党とともに野党協力から共産党を排除する「社公合意」が原因だと指摘した。つまり、新たな野党共闘が軌道に乗った今、機関紙も党員も革新共闘時代のように伸びしろがあるとの見立てだ。
が、革新共闘は社会主義への共鳴もあった冷戦時代だったが、今の野党共闘は違う。他党は旧社会党のように社会主義も、まして共産主義は求めないので、共産党機関紙の拡大につながるとは言い難いだろう。
編集委員 窪田 伸雄