首相在職最長「自由民主」 実績強調の裏に多弱野党
共産張り切り旧民主粉々に
「在職日数で憲政史上最長」。自民党の機関紙「自由民主」(12・3)のトップ見出しは、11月20日に安倍晋三首相の「通算在職日数が2887日となり、桂太郎を抜いて憲政史上最長を更新」したことをアピールした。「令和の時代、新しい時代を作っていく」など首相が記者団に述べた内容に、幹事長、総務会長、政調会長の党三役のコメントを添え「党執行部が偉業称える」(見出し)ものだ。
同紙は、「3年3カ月ぶりにわが党が政権を奪還して以来、安倍総理はバブル崩壊や東日本大震災で冷え込んだ日本経済の再生を目指して『アベノミクス』を強力に推進。この7年間で名目GDP(国内総生産)が大幅に上昇するなど客観的な数値が示すとおり、次々と成果を上げている。また、自身が掲げる『地球儀を俯瞰する外交』を精力的に展開。国際情勢が混迷を極める中、安倍外交は各国首脳からも高い評価を得ている」と実績を強調した。
これは同党が語る「憲政史上最長」実現の理由だが、そのような評価が支持層にあるのは確かで、安倍氏は衆院選3回、参院選3回の国政選挙で6連勝し、目下、首相在職最長を更新中だ。しかし、裏を返せば野党の弱さがもたらした側面もある。
その野党は当初、2012年12月26日に始まる第2次安倍政権がここまで続くと考えていなかった。一つには民主党に政権交代する前、06~07年の第1次安倍政権が参院選敗北で1年に満たず退陣したことがある。首相の健康不安が理由だったが、政権投げ出しのイメージが残り、安倍氏は12年の党総裁選では地方票で石破茂氏の後塵(こうじん)を拝した。
特に、民主党が野党に転落し、安倍首相の再登場に戦いやすいと見て張り切りだしたのは共産党だった。13年5月に同党第7回中央委員会総会(7中総)が同年夏の東京都議選・参院選に向けて開かれ、これを報じた同党機関紙「しんぶん赤旗」(13年5・9)は「“自共対決”こそ真の対決軸」と大見出しを取って気勢を上げた。
この中で志位和夫委員長は、安倍政権は「『暴走』するはなから『破綻』する」と短命を予言した。「暮らしと経済・原発・外交・憲法・歴史問題」などで「暴走」しているが、「アメリカいいなり」「財界中心」「歴史逆行」など「土台が腐りきっている」のですぐ潰(つぶ)れると見たのだ。
このような扇動で党の運動を刺激し、共産党は同年の都議選、参院選で議席を伸ばした。が、自民党も勝利し、民主党だけ惨敗。14年衆院選、15年統一地方選も同様だった。結局、共産党の「自共対決」攻勢で打撃を被ったのは自民党ではなく民主党だった。
その後の「民共共闘」も二大政党制を担った民主党が粉々になった大きな要因だ。15年通常国会における安保法制騒動でついに民主党は共産党に屈服し、民共共闘を受け入れて16年参院選に党名を民進党に改めて臨んだが、なお議席は減り、共産党は増加した。
民進党は共産党の野党共闘攻勢の前に党内矛盾を抱え、17年衆院選で希望の党からの出馬をめぐり分裂。立憲民主党、国民民主党、無所属の会~社会保障を立て直す国民会議などに分かれている。
さすがに不利と考え、17日に立憲、国民両党は再び合流に向けて協議に入った。機関紙を見ても「国民民主」(11・15)は「野党結束、政権の誤り正す」(見出し)と大学入試への英語民間試験導入延期を1~2面でアピールし、「立憲民主」(11・15)1面も同じ内容である。「民進プレス」の頃から発行日も同じ第3金曜だ。が、新たな対抗軸を示せるかはなお不透明だ。
編集委員 窪田 伸雄