シングル出産もあり?危うい少子化対策
子供へ配慮欠き禍根残す
「文藝春秋」は臨時増刊号として「文藝春秋オピニオン 2014年の論点100」(文春ムック)を出した。社会問題から国際情勢まで、今年起きた時事問題について、今後の進展の予測を含め、専門家の論考を集めた雑誌だ。その中で、「少子高齢化対策は進んでいるか」とのテーマの中で、気になる論考があった。一つは、慶應大学医学部教授で内閣官房参与の吉村泰典の「日本人女性は結婚しないと出産しない」。
少子化による人口減少に歯止めをかけることが、政治の重要課題であることは間違いない。人口を減少させないためには、合計特殊出生率が最低2・07必要なことはよく知られているが、2012年のそれは1・41だから、これを人口が増加するレベルまで上げるのは不可能に近い。そして、出生率がこのまま推移すると、現在年間に約100万人生まれている赤ちゃんの数は2050年には半分の50万人に減ってしまう。人口もこの年には9000万人を切るとの推計がある。
こうした数字を見ると、愕然(がくぜん)としてしまうが、だからと言って、どんな手を使ってでも女性に子供を生んでもらおうというのは短絡的な発想である。ヨーロッパ諸国の国のように、婚外子を増やせというのはその典型である。
吉村は、日本の婚外子は2%と、OECDの中では韓国と並んで最も低い事実を述べた上で、「シングルマザーを社会的に受け入れるための文化醸成も欠かせないのではないだろうか」と述べている。この前段では「シングルマザーを奨励するものではないが」と断っているが、婚外子がもっと増える社会にすべきだという考えがあるのは間違いない。
少子化問題については、吉村の論考に続いて、「出産ジャーナリスト」の河合蘭の論考「卵子教育は本当に必要なのか」も並んでいる。その中で、河合も「日本は年齢だけではなく、シングル出産を排除するなど、親が少し標準形をはずれたことをするととやかく言って、勝手なレッテルを貼りすぎている」と指摘する。
要するに、こちらも未婚の出産に寛容な社会にすべきだというのであるが、生まれてくる子供の幸せや、婚外子増加が社会に与える負の面についての熟慮を欠いているのではないか。社会の活力を維持するためには、人口を減らさないことは必要だ。しかし、婚外子が増えると、現在でも深刻な児童虐待や生活保護費の増大などで、逆に社会の活力を奪うことにつながる恐れがあることを忘れてはならない。社会と大人の都合だけで、出産の問題を述べるのは未来に禍根を残すことになるだろう。(敬称略)
編集委員 森田 清策