MRJ初飛行成功に日本の航空機産業の一段の発展を鼓舞する各紙

◆エール送る毎日など

 三菱重工業と子会社の三菱航空機が開発中の、国産初の小型ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」が11日、愛知県豊山町の県営名古屋空港で初飛行に成功した。MRJは1960年代に開発されたプロペラ機の「YS11」以来、約50年ぶりの国産旅客機。2008年の開発着手から7年を経て、実用化に向け大きなステップを踏み出した。

 各紙も社説で「航空産業育成の一歩に」(毎日12日付)、「国産技術の未来切り開け」(産経)、「世界へ羽ばたく大きな一歩」(本紙14日付)などとMRJ初飛行の成功を称(たた)える論評を掲載した。

 毎日は、MRJの初飛行は「日本の航空機産業の新たな扉を開いた」とその意義を強調し、また航空機産業が「高い技術力と信頼性が要求され、部品の多さから裾野も広い」ことから、MRJの初飛行により同産業が「大きく育つことを期待したい」とエールを送るのである。他紙も同様で、筆者も同感である。

 産経は「これを弾みに世界市場で受注拡大を図り、日本の工業技術の底上げにつなげてほしい」と訴える。

 産経がこう訴えるのも道理で、YS11以来、「半世紀ぶりとなる国産旅客機の開発は、わが国航空機産業の悲願」(同紙)なのであり、日本が誇る「ものづくり」の底力を示し、「成長が続く海外市場で確固たる地位を築き上げてほしい」(同紙)というのは、関係者のみならず、少なからぬ国民の熱い思いなのである。

 MRJが参入する座席数100以下の小型機市場は現在、カナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルが合わせて70%近くを握る。三菱重工業や三菱航空機は、MRJが両者の航空機より燃費が20%程度すぐれていることや、ゆとりある客室空間などの長所を訴え、向こう20年に見込まれる5200機の需要のうち、約半分の2500機を受注したいと強気である。

◆国内比率求める読売

 13日付社説で「航空機産業の裾野を広げたい」とした読売は、MRJの受注上積みへ「政府による海外へのトップセールスが欠かせまい」と強調。受注は現在407機にとどまっているが、これが増えれば、航空機産業が「日本の経済成長を牽引(けんいん)する基幹産業に育つことも期待できよう」と指摘する。

 「MRJの部品点数は、自動車の30倍の100万点に及ぶ。産業の裾野は広い」(読売)ため、同紙は、現在3割にとどまっているMRJの国産部品の比率を、「可能な限り引き上げることを目指したい」と提案する。

 日経も「国の役割も重要」として、トップセールスのほか、輸出を後押しする制度金融が必要と指摘。さらに、「航空技術が一国の安全保障と強いつながりを持つことも、忘れてはならない」と強調したが、同感である。

 また、多くの新聞が指摘するのが、YS11の経験である。「技術的には一定の評価を得ながらも、生産コストの管理が甘く、海外での販売・保守網も弱かったことから商業的には失敗に終わった」(日経)ことを貴重な教訓にせよというわけである。もっとも、三菱側も十分承知のようで、三菱航空機の森本浩通社長はアジアに営業拠点を新設する考えを表明している。

 ただ、東京(12日付)などが指摘するように、MRJ初飛行の成功は「まだ入り口にすぎない」(同紙)、「これで成功が保証されたわけではない」(日経)のも確か。

 5度の計画変更で、当初予定に比べて開発作業が4年遅れている。産経は「これまでのような遅れが繰り返されれば、海外での受注活動に悪影響を与える可能性があることを忘れてはなるまい」と念を押すが、その通りである。

◆新産業に東京が注文

 開発作業が遅れ、初飛行まで時間がかかったことについて、東京は、「型式証明」という安全性の認定手続きの難しさを指摘した。MRJが戦後初のジェット旅客機開発ということで、「開発する三菱も、安全性を審査する国土交通省も、最新の航空機を認証した経験がなかった」(東京)からである。

 東京の「日本の挑戦は、一七年に予定されるMRJ納入開始では終わらない。新産業を根付かせるには、関連業界全体で安全技術を高め人材を育成して、部品の国内製比率を高めることだ」は、的を射た指摘である。

(床井明男)