朝日慰安婦報道取り消し1年/産経が植村元記者インタビュー詳報

◆読みごたえある特集

 そうか、もう1年になるのか。すっかり忘れていた――。

 朝日新聞が自社の慰安婦報道に関する記事の一部の誤報を認め、関連記事を取り消してから5日で1年となる――と書き出す産経新聞(4日)の記事で、それを思い出した。記事は第1面で、この1年の朝日誤報をめぐる内外の動きを追う一方で、3、27面で誤報取り消し記事とは別に、「捏造(ねつぞう)記事」などと批判のある、初めて名乗り出た元韓国人慰安婦の証言記事を書くなど初期の朝日の慰安婦報道を支えた植村隆元記者(北星学園大学非常勤講師)のインタビューを詳報するなど、読みごたえある特集となった。

 慰安婦報道をめぐる朝日の報道について、産経などは歴史家の研究発表などから、その信憑性(しんぴょうせい)に疑義を突きつけ厳しく追及してきた。朝日が昨年8月5日付特集記事で、「従軍慰安婦」の根拠としてきた自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長、吉田清治氏(故人)の「韓国女性を強制連行して慰安婦にした」とする証言を虚偽と判断し、関連記事16本を取り消した。しかし、植村氏が元韓国人慰安婦の女性について、「女子挺身(ていしん)隊の名で戦場に連行」とした記事(平成3年8月11日付・朝日大阪本社版)については「意図的な事実のねじ曲げなどはありません」と批判を認めなかった。

 しかし、朝日の第三者委員会報告は「『女子挺身隊』と『連行』という言葉のもつ一般的なイメージから、強制的に連行されたという印象を与える」「安易かつ不用意な記載であり、読者の誤解を招く」と批判したのである。植村氏の記事は産経などから強い批判を浴びたが、その産経(阿比留瑠比、原川貴郎両氏)のインタビューに植村氏は初めて応じたのである。

◆緊張感の伝わる内容

 それだけに、対決インタビューの詳報は、植村氏がフランクで丁寧に応答する中で時折、逆襲に転じるなど強(したた)かな一面ものぞかせ、緊張感の伝わる内容だった。産経を読んでいない読者のために、その一部を転載する。

 ――挺身隊と慰安婦の混同が韓国でかなりあったというのは分かる。植村さん自身はどう思っていたか

 「当時、『挺身隊=慰安婦』という形で使われておったんですよ。読売とか産経とかいろいろなところに出ているんです。私どももそういうのが前提でしたね」

 ――(金学順さんは)だまされたと記事に出てますけど、誰にだまされたと言っていたのか

 「それは分からない。誰にだまされたというのはもちろん聞いていません。だまされたというのは、意に反して慰安婦にさせられたということだから。でもさ、産経新聞は日本軍に強制連行されたとはっきり2回も書いているよね」

 「吉田さんのことを取り消したという事実はあるが、慰安婦問題のすべてが間違っていたかといえば僕は全然違うと思う。お伺いしたいが、朝日新聞の報道のどこが問題だと」

 ――いろんなところに問題がある。慰安婦問題に限らず過去の日本を悪者にしたいとしか思えない。過度にそう取り上げようとしている

 「朝日新聞のおかげで何か日本がおとしめられたという具体的な証拠があったら教えてほしい」

 ――武藤正敏前駐韓大使の本を読んでも、報道が出たことで急激に反日感情が高まって、宮沢喜一元首相が8回も謝罪して…

 「日韓関係を朝日新聞が悪くしていると思いますか」

 ――思います

 「僕はそうは思わない。見解の相違と思う」

◆全く反省ない植村氏

 丁々発止のインタビューは慰安婦問題についての議論を深め、なかなか興味深いものがあった。植村氏がインタビューに応じたことを評価したいが、不用意な記事についての反省がまったく見られないのはいただけない。海外では撒(ま)き散らされた「旧日本軍が20万人の女性を強制連行し、性奴隷にした」などのデマがなおも拡散し、日本及び日本人が貶(おとし)められていることを指摘しないわけにはいかない。

(堀本和博)