沖縄紙の「銃剣とブルドーザー」の軍用地報道に不都合な政府答弁書

◆基地必要多い高校生

 今年6月、沖縄の県内高校生が中心となって沖縄平和フォーラム2015が開催された。その中で県内28高校の生徒1046人を対象に行った米軍基地に関するアンケートの結果が発表された。地元紙、琉球新報(以下、新報)はこれを「基地是非63%判断できず」との見出しで報じている(6月21日付)。

 それによると、アンケートは「沖縄に米軍基地が必要か?」との問いに「必要」「不要」「どちらとも言えない」の三択で回答を求めたところ、必要20・6%、不要16・4%、どちらとも言えない63%だった。どちらとも言えない理由について新報は、「米軍基地に守られている」との認識を前提に、周辺住民の不満や米軍への「思いやり予算」などがあることで判断に迷う姿が浮かび上がる、としている。

 と言うことは、米軍基地が必要と考える高校生が不要を上回っており、迷っている子も「米軍基地に守られている」との認識を持っている。少なくともイデオロギー的な反基地派は少数にすぎない。地元紙が反基地は「県民総意」と報じるのとは大違いだ。新報は「判断できず」でなく「不要は少数」を見出しにすべきだった。

 沖縄地元紙の「見出し操作」はよく知られたことだ。基地の地主問題でも顕著で、「銃剣とブルドーザーで奪われた土地」が枕言葉だ。作家の百田尚樹氏が自民党勉強会で「(普天間飛行場の)基地の地主たちは大金持ち」と述べた際にも、この表現を使って百田発言を非難した。

◆被害者像の裏で潤う

 その普天間飛行場の地主たちの軍用地料(年間賃貸料)について7月、政府は答弁書で明らかにしたが、新報は「地主半数超100万未満」、もう一つの地元紙、沖縄タイムス(以下、タイムス)は「『普天間』の地主 200万円未満74%」との見出しで報じた。

 どちらも「金持ちでない」を強調する思惑がありありだ。とりわけタイムスは74%の多数が200万円以下と強調するが、逆に言えば、26%つまり4人に1人が200万円超ということだ。半端な軍用地料ではない。

 答弁書によれば、200万円以上は1020人。うち500万円以上は324人、1000万円以上は81人。むろん毎年、受け取るわけだから、「基地の地主たちは大金持ち」というのはあながちウソとは言えない。

 軍用地がすべて「銃剣とブルドーザーで奪われた」というのも間違いだ。確かに沖縄戦を通じて占領軍(米軍)は、旧日本軍の基地や施設を接収し、周辺の民間地も基地に組み込んだ。住民はキャンプに収容され、家に戻ろうとすると鉄条網で囲われていた。軍用地は国有地と県市町村有地、民有地が3分の1ずつだ。

 朝鮮戦争勃発後、米軍は再編に着手し、いわゆる第2次土地接収を行った。その際、一部で「銃剣とブルドーザー」による強制接収があったが、米軍はその代価として軍用地料を支払った。大半の地主は農家で、地代だけでなく耕作所得も要求し、米軍はほぼそれに応じた。

 当時は農業以外に収入の道がなかったが、農家が激減した現在も耕作所得を加えた額を受け取っている。それで貧しい沖縄で高級外車やピアノがバカ売れしたとの逸話も残る。妬(ねた)みもあり、「不労所得」との批判も出ている(来間泰男著『沖縄の米軍基地と軍用地料』榕樹書林)。

 こうした事実を地元紙はあまり報じず、「銃剣とブルドーザーで奪われた」と被害者像としてのみ描く。これでは地主の真実の姿は伝わらない。

◆復帰で借地料6倍超

 当の地主はどうか。沖縄市議会は7月7日、自民圧力報道問題の抗議決議を採択したが、その質疑で県軍用地等地主会連合会の元会長の浜比嘉勇市議は普天間飛行場の地主について「多くの地主、全員ではないが、大多数は今、接収されて喜んでいる」と発言した(新報9日付)。

 同市議は「接収された当時、地主は苦労した」と説明する一方、「(日本)復帰で借地料が6・6倍になり、その時から地主の苦労はなくなった。地権者からすると(普天間を)返還されることが苦悩だ」と述べている。

 これを新報は問題発言のように報じたが、続報は見受けない。沖縄地元紙の偏向報道の一端がうかがい知れる。

(増 記代司)