また「慰安婦」でマルクス史観の歴史学者や共産党らと共闘する朝日

◆韓国に安倍批判提供

 産経の国際欄に「ソウルからヨボセヨ」と題する人気コラムがある(毎週金曜日掲載)。筆者は40年近く当地から韓国情報を伝える黒田勝弘氏(ソウル駐在特別記者)で、毎回、一般報道にはない興味深い話題を取り上げる。30日付は「学者がもてない社会?」。日韓の学者について書く。

 韓国では学者がよく首相や閣僚、秘書官などに起用され政治に影響力を持ち、社会的にももてるし威張っている。これに対して日本では尊敬の一方で、学者は狭い分野の専門家で世間知らずとされ、政治など世事に口を出すことは必ずしも評価されない。

 こんな違いを黒田氏が俎上(そじょう)に載せるのは、韓国メディアが最近、日本で歴史学関連の16団体(会員約6900人)が慰安婦問題で安倍政権を非難する声明を出したと大々的に報じ、これに日本政府やマスコミが大きな関心を示していないと不満で、「日本には言論の自由がない」と見当違いの批判をしているからだ。

 これを黒田氏は「いやそんな大げさなことではなく、単に学者を見る目が違うだけの話なんです」と、やんわりかわしている。

 確かに声明はわが国では大きく報じられていない。共産党の機関紙「しんぶん赤旗」(26日付)によれば、国会内で記者発表したそうだが、新聞でこれを報じたのは赤旗以外では朝日ぐらいのものだ(26日付、ネットで検索するとNHKも報じていた)。

 声明は朝日援護の色合いが濃く、朝日記事は「80年以上の歴史があり大学の研究者ら2200人が加盟する歴史学研究会、日本史の学術団体としては最大の日本史研究会のほか、これらが加盟する日本歴史学協会、教員からの歴史教育者協議会などの名を連ねた。16団体の個人会員は数千人以上にのぼる」と大仰に書いている。

◆戦後左翼の常套手段

 だが、それでも第2社会面で地味に扱っていた。韓国メディアのように大々的に報じるには朝日をもってしても後ろめたさがあったのだろう。いずれも分かりやすいほど色のついた団体だからだ。

 戦後日本では「進歩的文化人」が徘徊(はいかい)し、なんでも学者の名を冠して権威づけて「安保ハンタイ」などと叫び、少なからず社会を惑わした(この構図は今も同じだが)。それで国民の「学者を見る目」が肥えた。

 とりわけ歴史学者には厳しい。マルクス主義者が多く、唯物史観で日本史を塗り替えようとしてきたからだ。そんな教育を受けた子供が奈良の大仏に石を投げつけたこともある。民衆を支配する権力の道具なのだそうだ。

 声明に名を連ねた団体は共産党系ばかりだ。中心となっている歴史学研究会(歴研)は昭和初期に発足、それを昭和21年に若手マルクス主義者らが作り直した。歴代委員長は原水協(共産党系)代表委員の江口朴郎・東大名誉教授や、朝鮮戦争が韓国北進で勃発したと主張した藤原彰・一橋大名誉教授のように筋金入りのマルクス主義者だ。

 日本史研究会はその京都版で、中身は歴研と変わらない。日本歴史学協会も左翼の牙城。建国記念の日に反対するなど政治運動に余念がない。歴史教育者協議会(歴教協)は昭和24年に「教育の軍国主義に反対し、民族的民主主義教育を守り育てる」をスローガンに共産党系教師らが結成。各地に支部を置く、いわば日教組(全教)の歴史教員版だ。

 こういういわく付きの団体が安倍批判の声明に名を連ねた。歴研委員長の久保亨・信州大学教授は「少数の左翼や右翼ではない、標準的な歴史学者の多数の意思だ。政治家は研究成果を踏まえてものを言ってほしい」(朝日)と言うが、声明は研究成果など微塵(みじん)も感じられない代物だ。

◆共産が「赤旗」で報道

 国会での記者発表の場は「赤旗」が書くぐらいだから、共産党議員が提供したに違いない。赤旗の記事末尾に「会見には、服藤早苗歴史科学協議会代表、丸浜昭歴史教育者協議会事務局長らが同席しました」とある。歴科協は共産党の外郭団体、歴教協はその実働部隊で、共産党監視下の声明発表だったことを裏付けている。

 それで記事掲載に二の足を踏んだ新聞が多かったのだろう。ところが、朝日とNHKは躊躇(ちゅうちょ)なく報じた。なるほど共産党と同じ穴のムジナか。

(増 記代司)