「慰安婦」誤報で謝罪せず火だるま状態の朝日に業界も信用懸け批判
◆失態続きで四面楚歌
いわゆる慰安婦報道での詐話師・吉田清治氏の「強制連行」証言記事取り消し(朝日8月5日付)に見る大誤報、政府事故調が福島第一原発所長の吉田昌郎氏を聴取した「吉田調書(聴取結果書)」を入手したとして「所長命令に違反して9割の所員が撤退していた」とした大報道記事(5月20日付)にふりかかる大誤報疑義に加え、今度は慰安婦報道での謝罪を忠告したジャーナリスト池上彰氏の連載掲載拒否をめぐるドタバタ、誤報問題で舌鋒(ぜっぽう)鋭く朝日糾弾を展開する週刊誌広告の掲載拒否や「●」伏せ字広告の掲載など朝日新聞は目下、火だるま状態でのたうち回っている。
今回、同業の新聞からの朝日批判が厳しいのは、先の検証特集で他社の慰安婦報道にもちょっかいを出して逆に反撃の砲火を浴び、傷口を広げた側面がある。身から出たサビだと言えるが、それだけではない。
虚偽だと判じた吉田証言に絡む記事で、謝罪もなければ社長も会見しない傲岸(ごうがん)さ。それが新聞社の常識かと思われたり、新聞は証言さえあればウラを取らなくても記事にし人や国を傷つけても構わない、いいかげんなものかと朝日と同類にされては迷惑な話だ。業界そのものの信用、信頼が傷つけられ、業界も自らの名誉を守るために批判するのである。
だからこそ今回は読売、産経だけではない。論調の比較的近い毎日や共同通信からも誤報批判され、朝日は四面楚歌状態に陥った。読売は連載「検証 朝日『慰安婦』報道」(8月28~31日4回)の中で、虚構の「強制連行」が韓国メディアと共鳴し世界に拡散する中で、吉田証言への疑問が出てきたのに朝日は放置したままだったことを厳しく指摘。自社記事については1998年8月11日の社説で「吉田証言」を「物語」だと指摘し、2007年3月27日の記事で吉田氏の著書について「90年代半ばには研究者によって信憑(しんぴょう)性が否定」されたと明記したなどと書いた。
その上で、朝日に「吉田証言から32年間にわたる大量の朝日『慰安婦』報道が、慰安婦の虚構の拡散にどう影響し、日本の名誉と尊厳をいかに傷つけたのか――。朝日は報道の結果責任について検証することなく、沈黙を続けている」と迫ったのである。
◆検証特集もほころぶ
一方、朝日は先の検証特集で「吉田証言」記事取り消しとともに、「当時は研究が乏しく同一視」と書き、女子挺身(ていしん)隊と慰安婦という全く別ものの両者を混同し、その誤用を認めた。これについて産経(8月23日第1面トップ記事)は、朝日は「22年以上前に社内で両用語の使用法をめぐり疑義が提起されていた」として、朝日の釈明に強い疑問を突きつけた。その例に平成4年1月16日付朝日社会面(東京本社早版だけが掲載)掲載の【ソウル15日=波佐場清】クレジットの記事が「韓国のマスコミには、挺身隊=従軍慰安婦としてとらえているものが目立ち、韓国民の多くは『日本は小学生までを慰安婦にしていた』と受け止めている」と書いていることを指摘し、朝日は両者が別の存在であることを「22年前から認識」と報じた。朝日の検証特集のほころびの一つである。
また産経(今月8日)は「慰安婦問題『偽証』 『吉田証言』とは何か」を全1ページ特集し、「吉田証言」を「朝日新聞はどう報じたか」を詳細に分析特集した。その中で「産経はどう報じたか」もたどり、「吉田証言」に疑問を投げかけた現代史家、秦郁彦氏の検証を紹介した記事(平成4年4月30日)などを紹介。長期連載「歴史戦」(断続的に掲載)第5部「『朝日検証』の波紋」(8月23~25日の3回)、同第6部「『主戦場』米国」(同30日~9月3日の5回)では、慰安婦「強制連行」の誤報から韓国、反日の中国系住民が画策する米国にまで広がった慰安婦像設置が日本の声価をおとしめている問題をリポートしている。
◆裸の王様になる朝日
朝日は誤報の責任が重いことは言うまでもない。「記事の誤りにとどまらず、日本の国益が損なわれている事態に対し、朝日新聞にはさらに詳しい説明を求めたい」(産経8日主張)が、それとは別に日本及び日本人は世界が抱いた日本への誤解を解くべく努力が求められている。冒頭に記したように朝日新聞は週刊誌、月刊誌からも容赦のない連続集中砲火を浴び、その対応に右往左往するばかり。今や都合のいい情報しか入らないトップには、正常な判断ができない“裸の王様”状態に陥っている兆候すら見られるのである。
(堀本和博)