全米オープン準優勝の錦織選手のコーチと恋人で競った新潮と文春

◆快挙追って周辺取材

 本欄で毎週、毎回、朝日新聞が俎上(そじょう)に上るのも少し食傷気味だから、あえて別の話題を拾ってみる。ちなみに、この週も朝日新聞の「慰安婦検証」「池上彰コラム掲載拒否」「原発吉田調書誤報」などが大幅な紙数を占めてはいるが…。

 さて、日本中を沸かした話題は何といってもテニスの錦織圭選手だ。4大大会で初の日本人優勝者が誕生する、一歩手前まで行った。全米オープンでの準優勝は十分に「快挙」である。テニスに縁のない人々もこの話題で持ちきりだった。

 決勝戦が行われたのが日本時間の9日火曜日朝6時から。木曜日には店頭に並ぶ週刊新潮(9月18日号)、週刊文春(同)は既に締め切りを過ぎている。だから、決勝の試合内容は当然入れることができない。しかし、この話題は外せない。となると“周辺”話題で記事を作るしかない。締め切りがある媒体の宿命のようなもので、工夫を要するところだ。

 それで両誌が目を付けたのが「コーチ」と「恋人」だ。判で押したように同じ話題を取り上げている。

 今回、錦織選手が大躍進を遂げた裏には、全仏優勝経験のあるマイケル・チャン氏のコーチ就任があった。週刊誌として注目するのは当然の観点だ。

 チャン氏は米ニュージャージー州で台湾系中国人家庭に生まれた。錦織選手との出会いは、2011年に有明で行われたチャリティーマッチだったが、コーチ就任は昨年12月とつい最近のこと。それからこの短期間に錦織選手が「大きく成長した」(新潮)のはなぜか。読者の疑問が向かう点である。

◆「大きな成長」に関心

 新潮は「元テニス国際審判の川延尚弘氏」に聞いている。「錦織くんはマイケル・チャンの指導を受けることで大きく成長した。錦織くんは天才肌で、天性のセンスでプレーする選手。そんな彼にマイケル・チャンは厳しい練習を課し、徹底的に基礎を体に染み込ませ、確実に習得することを学ばせた」と説明する。

 さらに、「元プロテニス選手で法政大学教授の神和住純氏」は、「現役時代にその別世界(グランドスラムの決勝、準決勝)を経験しているマイケル・チャンが側にいたからこそ、今回の錦織の活躍があるのです」と語っている。

 文春の記事はもう少し詳しい。「チャンコーチからは十個所以上の修正箇所を指摘されたという」と書き、「日本テニス協会広報委員を務める秋山英宏氏」からは、「チャンコーチは、錦織を選手としてリスペクトしつつも、運動部のしごきのような厳しい練習を課した」「躊躇(ためら)う錦織にかなり厳しい言葉を投げかけて覚悟を決めさせたのもチャンコーチでした」と語らせている。

 アジア系コーチでなければできなかった指導だろう。いったい二人の間にどのような心の通いがあったのか、チャンの指導を錦織がどう吸収していったのか、チャン氏の人となりも含めて、今後、週刊誌に追ってもらいたい話題である。

 次は「恋人」だ。卓球の福原愛選手と“浮名を流した”ことは記憶している読者も多いだろう。だがその後、北京五輪出場経験のある元体操選手とのお付き合いが報じられたことまで憶えている人は少ないに違いない。

 「一昨年の秋に『FRIDAY』に撮られて以降、半ば公然の仲」(文春)である坪井保菜美さんがその人だ。

◆見守ってあげたい恋

 同誌は「テニス関係者」の話として、「彼女は錦織が出場する各地の大会によく同行していました。昨年の全豪オープンの公式VTRにも二人の姿を確認することができます。双方のご両親も公認のようで、かねてから錦織が結果を残してから結婚するのではないかと目されてきました」と伝えている。

 「運動生理学や栄養学など、学生時代に学んだことを錦織のために生かそうとしていた」といい、「面倒見のいいタイプ」「マッサージをしてあげるなど身の回りの世話を手伝っていた」献身的な世話女房タイプのようだ。あまりメディアは騒がずに、静かに見守ってやってほしい。

 錦織選手が13歳で単身米国に渡り、世界的なテニス選手を輩出している「IMGニック・ボラテリーテニスアカデミー」で修業したことは、今回両誌とも簡単に触れただけだった。このテニス留学がなければ、今日の錦織はなかった。国内の育成体制にも目を向ける必要があろう。

 次の特集は「グランドスラム優勝」を機に、根掘り葉掘り書いてほしいものだ。

(岩崎 哲)