「枝野首班」担ぐ政権枠組みの明確化を求めた「日曜討論」国民・榛葉氏
◆野党の政権への覚悟
選挙イヤーの今年、東京都議会選挙が告示されたことにより、いよいよ衆院選挙まで続く各党の政治決戦が本格的に幕を開けた。新型コロナウイルス感染、ワクチン接種をはじめとした諸々(もろもろ)の対策、7月23日に始まる東京五輪・パラリンピックの進行状況が有権者の投票行動に影響するだろう。
普通ならば与野党の舌戦もエスカレートしていくところ、コロナ禍の異常事態の中にあって社会的距離を保つなどの感染対策から各党のさや当ても控えめに感じられる。各党幹事長クラスを招いたNHK「日曜討論」(13日生放送)は、「与野党に問う 新型コロナ・五輪・政局」をテーマに淡々と各党からの主張が述べられたが、通常国会終盤の内閣不信任案提出をめぐる議論でも野党側の迫力が欠けていた印象だ。
結果として、野党が求めた3カ月の会期延長に与党が応じないため、14日に内閣不信任案は提出されたものの否決され、一方で菅義偉首相はコロナ対策に専念するため衆院解散を見送ると表明した。五輪を控え、退陣も解散もないことは同番組放送時点で既に与野党とも織り込み済みであることが透けて見えた。
ただ、今後の選挙に関係することとして、不信任決議案を提出する場合の野党の「覚悟」を問う場面があった。立憲民主党の福山哲郎幹事長が不信任案提出で解散になって政権交代したら8月には政権を発足し得ると「覚悟」を表明したところ、国民民主党の榛葉賀津也幹事長が「覚悟」の中身に迫っていた。
◆曖昧な共産への姿勢
「われわれ野党も覚悟が必要で、内閣不信任を要求する以上、野党第1党の枝野(幸男立憲民主党)代表が、その後の政権をどういう枠組みで担っていくのか、どういう構想で政権交代を生み出すのか、その政権構想や理念を明確にすることがわれわれにとって求めていきたいことだ」と述べ、枝野氏の姿勢を質した。
事は衆院選をにらんだ駆け引きだが、出演中の福山氏ではなくわざわざ番組に出ていない枝野氏を名指しして榛葉氏が「政権構想や理念を明確にすること」を訴えたのは意味深長だ。枝野氏は5月に出版した著書「枝野ビジョン 支え合う日本」で「政権をとるためにも…何よりも理念と哲学、『目指すべき社会像』を明確にすること…が重要」などと書いている。
が、共産党への姿勢が判然としないからだろう。「枝野ビジョン」自体には共産党に触れておらず、それがかえって“支え合う”一員かどうか分からなくしている。共産党は同番組でも小池晃書記局長が「市民と野党の共闘で政権交代を実現」と強調しており、政権参加をうかがっている。
このため榛葉氏は枝野氏を念頭に、「中には共産党さんと閣内、閣外協力であるとか、連合政権という言葉もあるが、こういった方向性について曖昧戦術のままの内閣不信任案提出ならば、迫力がないし、国民に失礼になるし、政府与党からも足元を見られると思う」と問い詰めた。
今後の与野党の政治決戦である衆院選や前哨戦の都議選にも影響する話だが、確かに「枝野首班」を担ぐ枠組みが明確でなく曖昧だ。反自民非共産路線の労組・連合の支援をストレートに受ける国民民主党ならではの発言だが、放送時間内でそれ以上の議論はなかった。
◆捨てられぬ選挙協力
ちなみに衆院選に対して福山氏は、「4年間の政権、特に菅内閣の評価」を争点として、「われわれは枝野代表を総理大臣にして政権を担う準備をして訴えていく」と述べた。
その後、枝野氏は17日に行われた連合中央執行委員会に出席した後、「共産党との連立政権は考えていない」と表明した一方で、政策ごとの「パーシャルな連携」や衆院選挙区での候補者一本化で協力する考えを示している。その方向は、お互いに“支え合う”という範疇(はんちゅう)にあると解釈できる。これまでの選挙協力からの政治力学が働くはずだ。
(窪田伸雄)