コロナの特効薬「イベルメクチン」が普及しないからくりを解いた新潮

◆国内外で効果が報告

 新型コロナウイルスの特効薬「イベルメクチン」がどうして普及しないのか……。週刊新潮がそのからくりを解いている。

 イベルメクチンを開発したのは北里大学の大村智特別栄誉教授らで、大村教授はこれで2015年、ノーベル生理学・医学賞を受賞している。イベルメクチンは各地で薬として承認され、アフリカなどで駆虫薬として普及し、多くの命が助かっており、国内外で新型コロナにも効果があることが報告されている。

 そうした実績があるにもかかわらず、なぜ日本ではその特効薬を広く使わず、重症者数と死者数だけを数え、「医療崩壊」などと騒いでいるのか。慎重過ぎる承認手続き、政治的思惑、製薬会社のそろばん勘定、等々、さまざま理由はあるだろう。同誌7月1日号がその辺の事情を報じた。

 まず、イベルメクチンの効用を日本に伝えたのは外国の医師たちだった。「全米で新型コロナの救急救命の最前線に立ってきた医師団、FLCCCアライアンスと、その会長ピエール・コリー博士が、日本オリンピック委員会(JOC)宛てに、五輪の安全な開催への希望として、こんな文書を送っていた」と同誌は紹介する。

 それには、「イベルメクチンを中心としたプロトコル(手順)にビタミンを加えたものによって、この病気のすべての段階を予防、治療できることが、何十もの査読済みの研究結果として明らかになっています」とある。

 とはいえ、イベルメクチンはコロナの治療薬としては薬事承認されていない。「日本では抗寄生虫病薬としてしか認可されていない」のだ。しかし、「医師でもある日本維新の会の梅村聡参院議員」は、「実は厚労省もイベルメクチンを、新型コロナ治療薬の一つとして『診療の手引き』に載せており、一般的な認識として、まったく効かない、意味がない、とは考えられないと思います」と指摘する。そして田村憲久厚労相も「コロナ患者に処方していい」「その場合、保険適用する」旨の答弁をしている。

◆米製薬大手が圧力か

 ならば何が問題なのか。厚労省は効能を認め、厚労大臣も保険適用していいと言っているのに、どこがネックとなっているのか。前述したようにイベルメクチンは現在日本では「抗寄生虫薬としてしか認可されていない」。これが最大の障害となっているのだ。

 厚労相がいくら答弁で「処方していい、保険適用する」と言っても、要は法律がそれを裏付けていないのだ。そのため、通常国会では医師で立憲民主党の中島克仁議員が「イベルメクチンなど10種の薬剤の緊急使用に関する法案を、6月8日に議員立法で提出した」。だが成立せずに国会は16日閉会してしまった。

 中島議員が求めたのは「薬の承認ではなく緊急使用許可」だったが、「法案は審議すらされ」なかったという。中島氏は憤りつつ、その背景を「メルク社の圧力ではないか」と同誌に語っている。メルク社とは何か。米国の大手製薬会社である。

 「現在、メルク社は新薬開発に力を入れており、イベルメクチンのように特許の切れている薬は、効果が認められても投資するメリットがない」のだそうだ。だから中島氏は「平時は製薬会社主導でも、有事には既存薬に関しては、国の主導で使えるようにすべきです」と訴える。

◆ジェネリック開発を

 メルク社の広報は同誌に「科学的に、有効性と安全性のエビデンスが不足し、確実なデータは存在しないと考えている」と答えた。その一方で同社は新薬を開発中で、米政府は「12億㌦で購入」とも。日本では品薄で手に入らない。結局巨大製薬会社のそろばん勘定で命が測られているのである。

 同誌は「メルク社が動かないなら、ジェネリックを、日本でも開発」をと主張するが、その通りだ。それにしても悪辣(あくらつ)な巨大製薬会社と力のない日本政府である。

(岩崎 哲)