国際社会への影響明言せず、慰安婦報道で朝日新聞社長会見
朝日新聞社の慰安婦報道を検証した第三者委員会の報告をうけ、同社の渡辺雅隆社長が26日、東京都内で記者会見し、吉田清治氏(故人)の証言を中心とした慰安婦報道の誤りについて改めて謝罪した。第三者委の報告書で、慰安婦報道が国際社会に一定程度影響があったという指摘は認めたものの、「今後、国内外の影響について一つ一つの事実を拾っていくなかで、慰安婦報道の全体像の実相に迫るような報道を続けていきたい」と述べるにとどまった。
責任明確化のルール策定へ
同報告書では、この問題について、同委員会の岡本行夫、北岡伸一両委員が、朝日新聞などの報道が韓国内の批判的論調に同調したと指摘。波多野澄雄委員は吉田証言記事が韓国に影響を与えなかったとした一方で、他の慰安婦報道の記事については、渦中の宮沢訪韓に影響を与え、韓国政府がその記事を利用したと指摘している。しかしこの日配布された「第三者委の報告書に対する朝日新聞社の見解と取り組み」では、波多野委員が指摘した記事の影響についての重要部分は省略された。このため全体的に慰安婦記事の国際的影響については「限定的なもの」とする印象を与えた。
また会見では強制連行についての質問が集中した。その中で「吉田証言が事実でなかったと明らかになったが、今日の段階で、朝日新聞の見解は『朝鮮半島で強制連行はあったとは言えない』ということでいいのか」との質問に西村陽一東京本社報道局長は「朝鮮人慰安婦の強制連行を裏付ける資料は見つかっていないということだ。今後、吉田証言以外の記事についてということになるが、ここから以降は一つ一つの慰安婦の報道を着実に地道に続けていき(朝日新聞の見解を)示したい」と答え、朝鮮人に対する強制連行の有無についての判断を避けた。吉田証言以外の慰安婦関連の記事についての是非については検証しないとした。
また同社は今年8月に慰安婦報道の検証記事を掲載した際、記事を取り消しながら謝罪せず、批判しようとした池上彰氏の連載コラムの掲載を一時拒否した。いずれも木村伊量(ただかず)前社長らの判断で、第三者委は「編集に経営が過剰に介入し、読者のためではなく、社の防衛のための紙面を作った」と批判した。
こうした指摘を受け、同社は「経営陣が記事や論説の内容に不当に関与し、紙面をゆがめることを厳に慎む」と強調。経営判断から介入が必要と判断した場合も、取締役会に諮って議論を記録に残すなど、責任を明確化するルールづくりを進めるとした。