若者の骨が危ない!骨粗鬆症公開講座開く

骨の健康で晩年も健やかに

運動やカルシウム摂取を 「若者に大量予備軍」の警告

 最近、とみに関心が高まっている骨の健康について10月19日、骨粗鬆症財団による「市民公開講座2013」が都内で開かれ、日本人の健康寿命のための食事、運動、生活習慣についてさまざまな講演が行われた。約300人の参加者の大半が65歳以上の高齢者で、その関心の高さをうかがわせていた。(山本 彰)


市民公開講座の閉会あいさつを行う公益財団法人・骨粗鬆症財団の井上哲郎副理事長

市民公開講座の閉会あいさつを行う公益財団法人・骨粗鬆症財団の井上哲郎副理事長

 公開講座ではまず、同財団の折茂肇理事長が開会のあいさつ。自身が最近、スマホを手にした若者に、出会い頭に衝突されて転倒し骨折し、不自由な生活を送った体験談を吐露し、「今日参加した皆さんは、私の二の舞いを踏まないように、しっかり骨粗鬆症の勉強をしてほしい」と述べた。

 同財団は平成3年に創設された。超高齢社会を迎えた日本では、高齢になると必然的に骨の量と質が低下し、骨粗鬆症による骨折で寝たきりになるなど、自立した機能を保った生活ができにくくなる。この点をを踏まえ、同財団はその予防と対策の確立に尽力している。

 最初に、産婦人科医の太田博明・国際医療福祉大学教授が「健康寿命の大切さ/健康格差を無くして健やかな晩年を」と題して講演。

 わが国は60年前には65歳以上の年齢層の占める割合が5%だったが、その割合がどんどん増加し、近い将来3人に1人が65歳以上になると予測した。

 骨の量は18歳ごろをピークに年々少しずつ減っていく。40歳くらいまでは、骨の状態にあまり違いはないが、それを過ぎると骨の健康度の格差が大きくなってくる。太田教授は、いつまでも颯爽(さっそう)と歩けるように骨の健康に気を付ける必要性を訴えた。

 骨粗鬆症は、長年の生活習慣などにより骨の量がスカスカになって骨折しやすくなる病気だ。主に閉経後の女性や高年齢の男性に見られるが、若い人でも栄養や運動不足などの影響でなることもあり、長年の生活習慣が原因となることから、生活習慣病の一つとも考えられている。

 次に伊奈病院医師(整形外科医)の石橋英明氏が「90歳まで骨折しないための骨粗鬆症の気を付け方~骨折を予防する運動習慣」と題して講演。

 石橋氏は、全国で1280万人が骨粗鬆症であるが、遺伝的要素が4割あるほか糖尿病、早期閉経(45歳未満で閉経)の人に起こりやすいと指摘。

 その上で、なぜ骨が弱くなるかについて、新陳代謝により破骨細胞で古い骨が溶かされ、骨芽細胞により骨が造られていくとの仕組みを述べ、1年で10%入れ替わると解説した。

 骨は、骨格を形成することに加え、カルシウムを貯蔵する。血液には一定量のカルシウム(人体中のカルシウム量の1%)が必要であるため、それが不足すると骨のカルシウムが血中に溶けていく。

 石橋氏は、骨粗鬆症対策として、背筋訓練のための上体反らし、片足立ち、スクワット(立ったりしゃがんだりする運動)を毎日、少しずつやることを奨励。またスタスタ歩くことが効果的だという。

 石橋氏は、スクワットについて、膝を曲げるというより腰を後ろに引く感じで、膝はつま先より後ろで「大きなのっぽの古時計」をうたいながらやるとよいと指導した。

 最後に健康院クリニック副院長の細井孝之医師が「骨を守る食事と薬」と題して講演した。

 骨は、鉄筋に相当するコラーゲンにカルシウムが流し込まれているような構造だと指摘。カルシウムは、小魚(わかさぎ、ししゃも)、豆腐、乳製品、海草類、小松菜、ちんげん菜に多く含まれている。

 意外にも、栄養に気を付けている高齢者が必要なカルシウム量(1日に700~800㎎)を取っているのに対し、高校・大学生は偏食が多く、必要な量のカルシウムを摂取していないという。

 カルシウムの吸収をよくするためにビタミンDが必要だ。統計的に日本人はビタミンDの91%を魚から摂取。日光に毎日15分あたることも欠かせない。

 だが、若者に魚離れの傾向があり、ビタミンDが不足気味であると指摘。こうした若者の食生活を踏まえ、同財団HPは「骨粗鬆症予備軍が大量に発生している」と警告を発している。

 この市民公開講座は昨年から始まり、今年で2回目。同財団としては、日本は超高齢化社会に入り、ますます骨粗鬆症に関心を高める必要性が出てきたとの認識から、10月20日を「骨粗鬆症の日」と定め、今後もこうしたイベントを、その近辺で行う方針だ。