放課後の教育支援体制、コーディネーターの育成急務
北海道教育委がフォーラム
小中学校の児童・生徒に対する放課後の教育支援などを推進する北海道教育委員会はこのほど、平成25年度の成果を発表する「北海道教育支援活動推進フォーラム」を札幌市内で開催した。教育での学校、地域、家庭の連携の必要性が叫ばれる中、モデル的な支援活動が報告された。(札幌支局・湯朝 肇)
家庭・地域・学校の連携不可欠
隣接大学と協力する事例も
「小学生の農業体験では、一年を通じて地元農協の青年部の方々が応援していただいています。また、中学校では村に伝わる和太鼓の体験学習を行っています」
先月29日、札幌市内のホテルで開かれた「北海道教育支援活動推進フォーラム」。留寿都村教育委員会の和田幸弘・地域コーディネーターは写真を使いながら、地域での教育支援活動の様子を紹介した。
留寿都村は北海道の南西部に位置する人口1900人の小さな町。「蝦夷富士」と呼ばれる羊蹄山の麓にあり、農業が盛んな地域で、村内には小学校、中学校、高校がそれぞれ1校ずつ存在する。同村教育委員会では、「生涯学習を地域に生かす『みんなで支える学校、みんなで育てる子ども!!』」をキャッチフレーズに地域教育支援を進めている。
とりわけ学習支援活動としての農業体験では、小学3年生が馬鈴薯(ばれいしょ)、4年生はスイートコーン、6年生はかぼちゃというように、作付けから栽培、収穫まで参加する。その後、3年生は収穫した馬鈴薯で澱粉(でんぷん)をつくり、焼いて試食するなど調理体験学習も行っている。
この日のフォーラムで紹介された事例は、留寿都村のほかに北海道の最北に位置する離島・利尻島にある利尻富士町教育委員会の取り組み。1360世帯2784人が暮らす島の産業は漁業と観光。島内には小中学校は2校ずつあるが、いわゆる離島というハンデを背負った教育支援は町内の悩みのタネだった。
そうした中で、同町教育委員会は平成24年度より、放課後子ども教室運営委員会を設置し、放課後や夏冬休みにおける子供の教育支援を地域ぐるみで積極的に支援することを決定。以来、水泳教室や書道教室、バトミントン教室、獅子神楽子ども教室など定期的に開催した。とりわけ、夏休みには北海道教育大学旭川校の学生7人が指導員となって5日間のチャレンジ教室を設けるなど隣接する大学と連携した教育支援を行っている。
地域を巻き込む教育支援について、道庁教育委員会の吉田広樹・社会教育係長は「限られた人口の中で、まず支援していただく人材を集まることから始めました。ところが、意外に様々な能力を持った方が多くいらっしゃった。そうした方々に協力していただいていますが、ほとんどはボランティア。放課後の教育支援は、そうした島民の善意なくして進めることはできません」と話す。
この日のフォーラムで報告された二つの事例は、文部科学省が主催する平成25年度「優れた『地域の学校支援活動』文部科学大臣表彰受賞活動」に選ばれたもの。
事例発表のあと、文部科学省生涯学習政策局社会教育課の入江優子・地域学習活動企画係長が、全国の取り組みを紹介しながら、これからの学校外支援教育について次のように語る。
「放課後などの子供教育支援は、子供と大人の触れ合う機会が増加し、子供にとっては社会性や規範意識が高まる。一方、大人にとっても学びの場となり得る。そして何よりも地域の教育力、コミュニティー力が向上し、地域活性化につながる」
さらに「そうした教育支援を確実なものにしていくためにも、学校や地域そして家庭を含めた支援体制を明確にしたシステムづくりが必要。とりわけ学校と地域・家庭をつなぐコーディネーターとなる人材の育成が急務だ」と説明する。
教育現場の教員の仕事が増え、児童・生徒と向き合う時間がとれないという声がある中で、NPO(特定非営利団体)ボランティアや町内会などの地域住民による教育支援は今後重要な役割を担う、とされている。
この日、主催者を代表して道教育庁生涯学習推進局の山田寿雄局長は「社会環境や生活様式が変化していく中で、子供の学力・体力の低下が指摘されているが、家庭と地域と学校の連携は不可欠なもの。今日の二つの地域の報告を通して、今後の我々の取り組みの有るべき姿をさらに深く考え実践してていきたい」と語った。






