植村冒険館、移転しリニューアルオープン


人となりを掘り下げて紹介、足跡を伝える詳細な年表

植村冒険館、移転しリニューアルオープン

冒険のシンボル、犬ぞりを展示したウエムラチャレンジベース(増子耕一撮影)

 東京都板橋区蓮根にあった植村冒険館が、昨年12月、板橋区加賀1丁目の植村記念加賀スポーツセンターに移転してリニューアルオープン。同センターは元、東板橋体育館という名称だったが、体育館と植村冒険館を融合させて、新たなスポーツ文化基地として誕生した。

 同スポーツセンターは3階建てで、アリーナ、室内温水プール、トレーニングルーム、武道館などの施設がある。冒険館は3階だが、館全体で冒険家、植村直己(1941~84)を感じることができるよう、各フロアにさまざな演出がなされている。

 1階のエントランスには「植村チャレンジベース」を置いて、グリーンランドで使用した実物大の犬ぞり(複製)を展示している。

 2階には室内プールの観覧席があるが、長い廊下の壁面に大型写真を展示して、冒険の迫力を伝えている。階段の壁面にも「準備、これがすべて。」「成功したということよりも、毎日練習を重ねた、その過程の方が意義がある。」など彼の言葉を紹介している。

 案内してくれたのは学芸員の内藤智子さん。「これまでは職員だけで企画し展示していたのですが、大きな施設なので、製作会社やデザイン会社も入れて基本デザインやコンセプトをつくりました」と語る。そのシンボルが冒険館入口にあるイントロダクションシアターだ。

 画面は3面あり、床面にも広がっていて、現場にいるような迫力だ。「エベレスト」「北極」「アマゾン」の3編で構成され、冒険の世界へと誘(いざな)う。

 「子供たちに伝えようという意図がありました。まず映像を見ていただいて、植村直己を知らない人を対象としつつも、掘り下げた内容となっています」と内藤さん。エベレスト頂上での映像は、植村自身の撮影によるもの。

 常設展示なので、その冒険と人となりを紹介することに焦点を置いて、「準備する」「極限に挑む」「次に向かう」で構成。

 よくランニングをしていたという、この近くの東板橋公園で撮影した写真があり、外国語の山岳関係の蔵書や、世界各地で入手してきた民芸品、普段身に付けていたセーターや帽子なども展示されている。

 植村が学生時代を過ごした明治大学山岳部の部室の風景写真もあるが、これは内藤さんが出掛けて行って1993年に撮影したという。

 奥に行くと、床面に、植村がアマゾンで使ったといういかだの実物大の図があり、レプリカのピラニアの入った鍋や、巨大なバナナ、山刀、鉄砲なども展示している。

 自慢の展示の一つが、新たに作成した、植村の足跡を伝える詳細な年表だ。冒険の旅の一つ一つにプロセスが示されていて、植村が過程に意義を置いていたということを具体的に示している。

 最後のコーナーが企画展示室。年3回、一つの冒険をテーマに展示しているが、これは移転前の展示スタイルを継承したもの。

 これで終わりではない。同じフロアの別室には冒険、探検、登山に関する貴重な図書を集めた「どんぐり文庫」がある。ドングリ君は、山でよく転んでいた明大山岳部時代の彼のあだ名だ。入場無料。

(増子耕一)