パリの子供は公共交通機関無料に


地球だより

 パリでは9月から、11歳以下の子供の公共交通機関利用が無料になった。昨年、行われた無料化の実験を踏まえ、市議会が今年6月に法案を可決し、9月からの施行となった。これで毎日の通学でバスや地下鉄を使っている子供の交通費はただになる。

 この措置により、パリはロンドン並みになるわけで、子供を持つ家庭にはありがたい話だが、単純ではない。フランスではまず、小学生までの登下校には安全上、保護者の送り迎えが義務付けられている。結果、車で通勤する親は、子供を車で送迎している。バスや地下鉄で通学するにしても、同伴する保護者の交通費は掛かる。

 確かに、子供の交通費分は節約できるし、週末などの移動でも無料はありがたい。とはいえ、当初の無料化の謳(うた)い文句だった車を使わないことによる大気汚染軽減や家庭の購買意欲向上については、左派のイダルゴ市長も大きな効果にはつながらないことを認めている。

 パリではこれまで、4歳未満の子供の公共交通機関利用は無料だったが、これが11歳まで拡大された。さらに、障害者認定を受けた20歳未満の青少年も無料、中高校生の定期も半額になる。14歳から18歳までを対象にレンタル自転車「ヴェリブ」の加入料金についても、市が全額負担する。これらの措置の対象となるのは幼稚園児・小学生16万人、中高校生13万5000人、ヴェリブ利用者10万5000人、障害認定者6000人で、計40万6000人が恩恵を受ける。市の負担は年5000万ユーロ(約58億円)と見込まれている。

(M)