やりきれないブレイビク事件


地球だより

 アンネシュ・ベーリング・ブレイビク受刑者(38)がノルウェーの首都オスロの政府庁舎前の爆弾テロと郊外のウトヤ島の銃乱射事件で計77人を殺害した事件から先月22日で6年が過ぎた。エルナ・ソルベルグ首相は追悼集会で、「われわれは犠牲者を慰霊するとともに、勇敢に人々を救うために戦った方々の名誉をたたえたい」と述べた。

 ブレイビク受刑者は21年の禁固刑を受け収監中だ。事件に対してこれまで一度として悔悛(かいしゅん)を表明していない。それどころか、独房生活が人権を蹂躙(じゅうりん)しているとして裁判に訴えている。

 ブレイビク受刑者の言動がメディアに報じられる度に、ノルウェー国民はやり切れなさを覚えるという。「どうして多くの若者が犠牲となってしまったのか。わが国の社会で、なぜブレイビクのような人間が出てきたのか」等の疑問に答えが見つからないからだ。

 ノルウェー政府は犯行現場となったウトヤ島に犠牲者の慰霊碑を建立する計画だったが、同島の自治体ホールの住民が、「犯行を常に思い出させる慰霊碑の建立に反対」を表明し、事件から6年が経過した今も、慰霊碑はまだ建立されていない。

 スウェーデンの芸術家がモダンな慰霊碑を草案したが、島の住民が、「旅行者の観光地となる」と反対。ここにきてようやく、ウトヤ島埠頭で慰霊碑を建立することで島と遺族関係者、市当局が一致、市建築部が建立作業を進めることになったという。

(O)