フランス社会を危うくする破壊分子の正体


地球だより

 フランスでは3月以降、政府が打ち出す労働法改正案に対する抗議行動が激化している。18日には、デモに紛れた暴徒集団が警官の乗車した警察車両を襲撃し、火炎瓶を投げ入れ、車から脱出した警官にさらに鉄棒で襲いかかる映像が世界に配信された。

 実は、フランスにはデモの時に、そのデモとは関係のないギャング集団が紛れ込み、デモ行進中の街頭で商店を荒らし、物を盗んだりする現象が起きていた。彼らは覆面、ゴーグル、マスクで完全武装し、デモ隊と機動隊との衝突をエスカレートさせたりする。

 今年に入ってからのデモのエスカレートにも、ギャング集団が一因しているが、その他にも2011年にニューヨーク・ウォールストリート街で始まった反資本主義を掲げる運動に参加した人々による街の占拠に触発された反資本主義、反グローバリズムを掲げる集団もデモの暴徒化を加速化させている。

 さらには、昨年11月のパリでの同時多発テロ以降、移民排撃の機運が高まる中、社会に不満を持つアラブ系の若者も武装してデモに参加し、警官に投石したり、火炎瓶を投げ込んだりしている。

 つまり、労働法改正に反対する労組中心の抗議デモは、今や別の方向に向かっているとも言われている。むしろ、法に従ってデモ行進する本来のデモ参加者は、デモの暴徒化に眉をひそめ、労組も暴徒を排除する要員を増員する事態となっている。

 そうなると、政府もデモの過激化は、別目的ということで、国民の多くは反対していないのではと疑念を持ち始めている。もともとフランスの労組加盟率は低く、多くの抗議デモを主導する労組の声は国民を代弁しているとも見られていない。

 つまり、その労組や極左、さらにはギャング集団や移民系の若者といったマイノリティーが、世界にニュースを配信する事態をもたらしている。いつの時代も社会の変化はマイノリティーの運動から始まると言われるが、不満をぶちまける単なる破壊分子たちの存在は、フランス社会を危うくしている。

(A)