英国へ高速列車通勤
地球だより
英国で仕事をするフランス人の増加は、20年前から続いており、ロンドンにはフランス人が集中して住む地区もあるほどだ。特に金融業界やIT産業で働く有能なフランス人は、フランスの約2倍は稼げるという理由で、英国で働くケースは少なくない。
そんな彼らの中には、住むのはフランス、働くのは英国という選択をしているケースも増えている。パリのビジネス・スクールを出たフランソワさんは「最初からロンドンで就職活動するつもりだった」という。結局、ロンドンで今まで3社の投資会社で働き、ビジネス・スクールの同級生の平均年収の2倍を稼いでいるそうだ。
最初は、ロンドンに住んで会社に勤めていたフランソワさんは、パリに住む女性と結婚したのを機にパリからの通勤を始めた。「大変そうに見えるけど、慣れればそうでもない。残業はないし、1時間の時差があるので、朝は余裕がある」という。彼は高速列車ユーロスターで通勤している。
長距離通勤の理由はさまざまだが、会社が交通費を負担しているケースも少なくない。また、ロンドンの住宅がパリよりもかなり高く、それでも住み良いアパートが少ないという事情もある。
それに食生活から言えば、フランス人にとって英国は厳しい。週末もフランスの方がゆっくり過ごせる利点もあるし、英国人が憧れるフランスに住んで、英国で仕事をするというのは、ある意味理想のパターンかもしれない。
欧州連合(EU)は、人と物の移動の自由を保障し、EU市民であれば、域内のどの国でも働くことができる。住む国と働く国が異なるパターンも十分考えられる。
島国日本では考えにくいが、陸続きのヨーロッパでは可能な話だ。とはいえ国境の壁がなくなりつつあるとは言えない。昨年来の中東からの大量の難民・移民が押し寄せる中、テロリストの移動も懸念され、EU内でも互いの国境検問を強化する動きは強まっている。
(M)