同性婚に強烈なフランス保守層の反発
地球だより
フランスでは、人種差別問題がちょっとした騒ぎになっている。それは、中道右派の議員がクリスティアーヌ・トビラ法相のイラストをフェイスブックに掲載し、中傷したからだ。トビラ氏はギアナ出身の黒人女性で、今春、同性婚の合法化法案を可決、成立させ、話題になった。
フェイスブックの内容は、フランスではなじみの深いチョコレートパウダー「バナニア」のパッケージに使われているセネガルの黒人男性の絵をトビラ氏に置き換えたものだった。バナニアのキャッチフレーズは「いいね!」だが、フェイスブックではトビラ氏の絵とともに「トビラ、良くないね」となっている。
実はトビラ氏への中傷は初めてのことではない。極右系週刊誌ミニュットの表紙で、本人の写真に「サルのようにずる賢いトビラ」とタイトルを付けられた。また、10月下旬にトビラ氏が訪問した仏西部の都市アンジェで、出迎えた子供たちから「お猿さん、バナナを食べろ!」と中傷された。
白人社会では、「猿」「バナナ」は黒人を差別する常套句で、最近では聞くこともなくなった。しかし、アンジェといえば保守的でカトリックの強い地域だ。今春の同性婚法制化の国会審議中の抗議デモも大いに盛り上がった。
フランスでは保守的なカトリック層は根強く、同性婚や同性カップルの養子縁組には、他の欧州諸国が驚くほどの激しい抗議運動が起きた。現在も同性カップルの婚姻届を拒否する市長が続出し、政府は法的な罰則を与えようとしている。
フランスの伝統的な社会構造を、黒人女性の大臣によって破壊されたという反発は計り知れない。実際、同性婚法制化を支持したオランド仏大統領、エロー仏首相の支持率も歴代最低の20%台に落ちている。
人種差別の裏には、フランス社会の変化を恐れる国民の懸念が見え隠れしている。
(M)