「国連の精神」に反する韓国の外交
韓国聯合ニュースによると、韓国国会外交統一委員会は22日、国連に8月14日を旧日本軍の慰安婦被害者追悼の日に指定するよう上程したという。8月14日は韓国光復節(植民地解放)の1日前であり、慰安婦だった金学順さんが1991年に初めて実名で慰安婦だったと公表した日にも当たるという。
韓国政府は民間組織の反日運動を利用して欧米諸国で慰安婦像の設置を進める一方、政府首脳陣は世界に告げ口外交を展開してきたが、いよいよ国連で慰安婦に関連した国際デーを制定しようと、反日の駒を一歩進めてきたわけだ。当方は韓国側の今回の動きに本当に危機感を感じる。
国連デー制定は提案国の説明を受け、通常、国連総会で採決して決定する。韓国側が慰安婦の犠牲者を追悼する国連デーを提案したとしても日本が強く反対するだろうし、加盟国の中には日本の主張に同意する国が少なくないはずだ。
韓国側には、「国連の主要舞台で慰安婦問題が協議されれば、国連デーが制定されなくても痛手とはならない」という読みがあるかもしれないが、韓国側の上程は日韓両国関係に消すことができない大きな傷跡を残すことになるだろう。非常に危険な冒険だ。
当方はこのコラム欄で慰安婦問題について数回書いてきた。基本的ポイントは、慰安婦問題は韓国の一部の職業的反日運動家がその憎悪から推し進めてきたものであり、憎悪が原動力である以上、成果はもたらさないということだ。慰安婦問題で焦点であった「旧日本軍による強制……」云々も、それを大きく報道してきた朝日新聞社が「誤報だった」と認め、社長自ら謝罪表明した以上、もはや説得力が乏しくなった。
慰安婦問題は基本的に女性の人権を蹂躙する性犯罪だ、それは戦時だけではなく、平時でも世界中で今も生じている犯罪行為だ。その性犯罪の撲滅という目的なら理解できるが、特定な戦争の、特定な軍隊の性犯罪を批判することは理性的ではない。なぜならば、旧日本軍の兵士たちの性犯罪を批判するならば、ベトナム戦争時の韓国兵士の性犯罪はどうなのか、といった議論が必ず出てくるからだ。被害件数という点では後者のほうがはるかに多い。もちろん、米軍兵士の戦時の性犯罪も忘れてはならないだろう。すなわち、戦争時には、女性は常に子供と共に最大の犠牲者だったのだ。
韓国側は「国連は2005年、ホロコーストの犠牲者を想起する国際デー(1月27日)を制定した。だから、慰安婦の犠牲者追悼の国連デーが出来ても不思議ではない」と主張するが、大きな間違いを犯している。日米間を含む戦争と、一定の民族への虐殺行為(ホロコースト)とは基本的に異なっていることを、韓国側は多分、恣意的に忘れているのだ。
ユダヤ人へのナチス軍の民族大虐殺は人類史上まれな犯罪だが、日米間を含む第2次世界大戦は戦争だ。ドイツが戦後、ユダヤ民族に対して無条件に賠償と謝罪を繰り返してきた。弁解の余地のない非人道的犯罪だったからだ。一方、戦時賠償を要求するギリシャや他の欧州諸国への戦争賠償問題は外交文書で一旦合意すれば、その後は「国際法上、如何なる義務からも解放される」というのがドイツ政府の立場だ。
終戦する度、敗戦国や植民国が加害国に対して戦時賠償を要求できるのならば、欧州でも無数の戦時賠償問題が表面化し、欧州各国は身動きできなくなるだろう。戦時賠償問題は決して第2次世界大戦だけではなく、19世紀、18世紀の戦争被害まで及ぶかもしれない。そうなれば、欧州で相互間の良好な関係を築くことはもはや期待できなくなる。
世界の紛争解決と平和促進を憲章に掲げる国連の舞台で韓国が憎悪に基づく動議を上程し、加盟国間の紛争を煽ることは、国連の精神に反する行為だ。国連事務局のトップに韓国人を頂く国が「国連の精神」に反する行動をとれば、後進民主国として国際社会から揶揄されだけではなく、潘基文国連事務総長は益々、肩身の狭い思いをするだろう。
ひょっとしたら、国連事務総長として3選の可能性のない潘基文氏は、次期韓国大統領のポストを狙って母国から上程された国会決議案の採択に向け、腐心するかもしれない。そうなれば、国連への信頼は完全に地に落ちることになる。
(ウィーン在住)