現代版「出エジプト記」
地球だより
17日で独立7年目を迎えるコソボでは独立直後の熱狂は既に消え、多くの国民は経済的困窮からセルビア経由で、ハンガリー、オーストリア、そして最終目的地ドイツに向かって移動している。
コソボは人口約180万人の小国で、住民の約92%がアルバニア人、最大少数民族はセルビア人で約4%だ。コソボは旧ユーゴスラビア連邦時代、セルビア共和国時代に自治州だったが、セルビアとの民族紛争の末、2008年2月17日、独立宣言をして主権国家となった。
コソボを国家として承認する国は昨年12月の段階で米国、英国、ドイツ、日本を含む110カ国だ。ロシアやセルビアなど国連加盟国の83カ国は依然、主権国家としてのコソボを承認していない。
オーストリア日刊紙プレッセ10日付はコソボの大量移住の波をルポしているが、一人のコソボ人は、「わが国には仕事はない。あるのは貧困だけだ」と答えている。昨年から今年にかけ、コソボでは既に人口の10%の国民が祖国を後にしているという。
ちなみに、コソボ人の約40%は貧困下の生活を余儀なくされている。失業率は約45%、若者では75%になるという。
シリアやイラクなど中東の紛争地から大量の国民(主に少数宗派の関係者)が内戦の難を逃れ、トルコや欧州諸国に流れてきているが、コソボのように平時の国の国民が大量移動する現象は近年、珍しい。まさに、“現代版出エジプト記”だ。彼らにはモーセのような指導者はいないが、約束の地はドイツ、フランス、オーストリアといわれる。
オーストリア通信(APA)によると、ハンガリー当局は過去6日間で約8000人のコソボ住民を不法入国で拘束したという。彼らはセルビア国境に近い南部都市セゲドから入国している。少ない日で667人、多い日には1697人のコソボ人が入国したという。冬に入ってその数は急増している。
ハンガリー当局によると、今年に入り、コソボからの不法入国者数は1万3000人。昨年1年間の総数は約4万3000人だった。12年は約2200人にすぎなかった。コソボの住民は西側に入国するためには査証(ビザ)が必要だが、セルビア国民は自由に欧州に入国できることから、セルビア旅券を申請するコソボ人が増えているという。
(O)