“隔離”される韓国大統領


地球だより

 先日、日本に帰国した際、民放の番組に安倍晋三首相が出演していた。外交や経済など日本が抱える諸問題について、すぐ横に座る司会者から質問や突っ込みを受け、安倍首相が答えるという討論方式だ。直接国民に語り掛けるようでもあり、好き嫌いは別にし視聴者はその表情や話し方から首相の「言いたいこと」を肌で感じ取れるリアルさがある。

 番組を見ながら思ったのは、まず韓国ではこうはいかないだろう、ということだった。「開かずの間」のような青瓦台(大統領府)に陣取り、国務会議(閣議)や国家プロジェクトのオープニングなどであらかじめ準備してきた内容や原稿を読み上げ、それをマスコミが報じるくらいで、テレビに生出演して「自分の言葉」で語り掛けることなど考えられない。

 朴槿恵大統領の場合は特にそうだ。野党の党首時代から「不通(疎通力がないこと)」と陰口をたたかれ、大統領になっても変わらない。今、日韓の外交問題に発展してしまった産経新聞前ソウル支局長問題でも浮き彫りになったように旅客船沈没という大惨事の最中、大統領は側近たちと顔を突き合わせることなく報告と指示をやりとりしただけだった。

 もっとも大統領だけのせいにはできまい。権威主義的な組織文化が根強く、トップは必要以上に下々の者から“隔離”されてしまう。現場に足を運ぶリーダーシップで言うなら、足を引きずりながら「現地指導」を繰り返す北の最高指導者にさえ負けているかも。

(U)