金正恩第1書記の報じ方
地球だより
先月の公演観覧を最後に動静が途絶えていた北朝鮮の最高指導者・金正恩第1書記が、40日の空白を経てついに公の場に姿を見せた。党機関紙・労働新聞は1面で、新たに建設された「衛星科学者向け住宅地区」を「現地指導」する金第1書記が満面の笑みをたたえて立っている写真をデカデカと掲載した。
韓国では政府当局が金第1書記の統治に変化なしとの見解を示していたのに、マスコミを中心に重病説、軟禁説、失脚説など諸説入り乱れていた。何せベールに包まれた国。中で何が起きているのか分からない。韓国では脳死状態に陥ったとする見方が浮上し、北京空港に現れたという金第1書記専用機の写真まで報じた中国メディアもあった。早く中国に亡命でもさせたかったのだろうか。
だが、荒唐無稽な話だと笑ってばかりもいられない。いなくなればいなくなったで、また姿を現せば現したで大騒ぎしているのだから、金第1書記としてはまんざらでもないだろう。写真1枚でこれだけ多くの耳目を集めてしまうのだから、世界を手玉に取ったような錯覚に陥ったとしても不思議ではない。
義理の叔父だった張成沢氏を処刑し、極度の恐怖政治で大混乱に陥るのではと思われてからまだ1年もたたない。それがいつの間にか「金正恩統治」には安定感すら感じられる。独裁国家が「正常国化」するには、指導者が動揺し、外部にSOSを求めるような状況に追い込まれなければならない。余裕を持ち、自信を持ってもらっては困る。
次回、金第1書記が姿をくらましたら、一切報道しない「シカト作戦」で応じてみてはどうだろうか。
(U)