“ジョンウン教”の犠牲者
地球だより
25年ぶりにローマ法王を迎えた韓国の熱狂ぶりを見ながら、以前、ある元韓国大統領府高官が語った言葉を思い出した。
「あの国は宗教国家と思えば一番分かりやすい」
「あの国」とは今回、法王が言及した「韓半島分断」のもう一つの当事国である北朝鮮のことだ。周知の事実だが、北朝鮮は信仰の自由など全く認められていない国。なのになぜ「宗教国家」なのかと言われそうだが、北朝鮮の宗教は金日成(キム・イルソン)・金正日(キム・ジョンイル)・金正恩(キム・ジョンウン)の世襲3代の絶対権力者を「神」のごとくに崇(あが)め、その「お言葉」が法律であり、そのおかげで生きていられると「感謝」し、その「教え」に従って一糸乱れず生きることが「信仰生活」になっている――という解説を聞けば、誰もが納得するのではなかろうか。
法王訪韓で何か欠けているものがあるような気がし、思い至ったのが北朝鮮住民のことだった。法王は弱者の目線に立ち、旅客船「セウォル号」沈没事故の遺族らを慰労したが、この分断国の北側にいる“ジョンウン教”信徒たちへの明確な慰労メッセージはついぞ聞くことができなかった。
そう思い、調べてみると案の定、韓国の脱北者団体が声明を出していた。
「今なお2400万の北住民は地獄のような地で苦しみ、唯一の神・ジョンウンを不信すれば公開処刑か政治犯収容所に送られ、一生を終える。彼らが人間らしく生きられるよう祈ってください…」
「法王が初訪朝、ミサに100万人」。いつの日か新聞にこんな見出しが躍る日が来てほしいものだ。
(U)