これも「人災」なのに…
地球便り
韓国は例年、7月後半から8月前半にかけてが一年で最も蒸し暑い。学校が夏休みということもあり、大人たちもこの期間中に休暇を取る人が多く、日本海に面した東海岸や各地の渓谷など代表的な避暑地は家族連れでごった返す。韓国的だと思うのは、核家族より仲のいい2、3組の家族や親子3代が集まった大所帯が多いことで、「個」より「群れ」を好む民族性の表れだろう。
ところで、この時期になると、決まって起こるのが水の事故だ。日本でも先日、丹沢のキャンプ場で中州から川を渡ろうとした車が増水で流され、母子3人が亡くなるという事故が起きたが、こちらでも全く似たような事故が起きている。南東部の慶尚北道で川沿いにあるペンションに投宿した一家族を含む7人のグループが、車で川を渡ろうとした際に鉄砲水で下流に流され、全員が命を落とした。
車が渡ろうとしたのは、川の水面から1㍍にも満たない所に造られた幅3㍍の堰(せき)だったといい、事故当時、現場は台風の影響で大雨注意報が発令されていた。増水のたびに周囲が浸水する被害が出ていながら地元行政は予算不足を理由にきちんとした橋梁(きょうりょう)を造らなかった。川沿いには営業中のペンションが100軒を超す。
「天災というより人災」と韓国メディアも指摘しているが、その割に報道が少ないのには驚かされた。これでは安全不感症がもたらしたあの旅客船「セウォル号」沈没の教訓が生かされない、という嘆きも漏れる。朴槿恵大統領は「国家改造」と大号令を掛けたが、まだあちこちに残る“セウォル号”を退治するのは容易でないということか。
(U)