韓国野党ダメージ深刻、選挙惨敗で「反保守」漂流か
韓国で先月実施された国会議員の再・補欠選挙で予想外の惨敗を喫した左派系第1野党・新政治民主連合(以下、新民主連合)。党の内外からは反省を促し、「解党的再出発」を求める声が上がっているが、リーダー不在などもあり前途は多難だ。(ソウル・上田勇実)
17年大統領選へ模索続く
先月30日の再・補欠選は、首都圏をはじめ与野党双方の地盤を含む広い範囲で実施されたため、民心を測る「ミニ総選挙」として関心を集めた。15選挙区のうち保守系与党セヌリ党の候補が11選挙区で勝ち、一方の新民主連合は4議席にとどまるなど、一方的な勝負に終わった。
この結果を受け、党首を務めた金ハンギル・安哲秀の両氏は辞任。非常対策委員長として次期指導部が発足するまで党を率いる朴映宣議員は「絶体絶命の危機」との現状認識を示した。選挙で受けたダメージがいかに深刻であるかを物語っている。
現在、新民主連合敗北に対する総括がさまざまに行われているが、やはり保革2大陣営の対決で敗れ、これまで掲げてきた「反保守」の旗印が漂流し始めかねないことが最も大きな政治的変化だろう。
韓国では長年の軍事独裁政権への反発や経済発展と価値観の多様化などが重なり、一昔前の「左派=共産主義=悪」という図式は、特に若い人々の頭からは消えつつある。民主化の闘士だった金大中大統領、人権派弁護士で鳴らし親北反米主義を貫いた盧武鉉大統領という左派政権10年の流れを受ける新民主連合は、「反保守」で結集し、再び政権を取る日を夢見てきた。
ところが、今回の選挙で負け、もはや小手先の戦略・戦術は通用しないという認識が広がっている。重鎮議員からは「安保や経済では与党に協力すべきだ」という指摘も出ている。
新民主連合が受けたダメージが深刻であるのは「有利な状況で負けた」ためでもある。4月に南西部沖で起きた旅客船「セウォル号」の沈没事故やその後の閣僚人事失敗で、高水準を保ってきた朴槿恵大統領の支持率は見る見る下落し、6月にはついに不支持が支持を上回った。これを追い風にできたはずなのに負けた。
また国民の人気が高い大統領候補の安哲秀氏と手を組み、中道支持者も抱き込めるはずだったのに、その効果がほとんど確認できなかった。そして同党にとって絶対的な地盤であった南西部の全羅道で与党候補に負けたことも大きな衝撃を与えている。
韓国では再来年の総選挙まで当面は大きな国政選挙がないため、形勢逆転のきっかけをつくるのは簡単ではない。党内を見渡しても革新強化論と中道強化論の二つの路線に分かれ、派閥も多数ある。「第二の金大中」「第二の盧武鉉」を思わせる強力なリーダーも不在だ。前回の大統領選で協力した極左野党・統合進歩党は、中核議員の内乱陰謀事件ですでに国民から背を向けられている上に政党解散請求を審査する裁判も進行中で、とてもパートナーとなり得る相手ではない。
2017年の大統領選に向け立て直しが急がれるが、しばらくは模索が続きそうだ。






