北朝鮮の「反日レベル」


地球だより

 韓国人女性客の射殺事件で北朝鮮の金剛山観光が中断される前、韓国に駐在する外国報道機関でツアーを組み、金剛山を訪れたことがある。有名な「九龍の滝」に向かって登っていく途中、所々に配置された若い女性案内員を囲んでは質問攻めにしたものだが、そのとき当方は「今回、日本人の記者も米国人の記者も来たが、どう思うか」と尋ねた。すると相手は一瞬答えに窮しながらも「正直、いい気持ちではない」と言い、記者たちの苦笑を誘った。“日帝”“米帝”を敵とする民族教育を肌で感じたものだ。

 だが、彼女たちのように反日で思想武装したエリートとは別に、一般の北朝鮮住民の反日感情は日本人が抱くイメージほどひどくないのではないか。日本による植民地時代に接した日本人は「とても親切」で「解放後の方がむしろ暮らしが傾いた」。ある脱北者が、幼いころに母親から聞かされた体験談だと言って教えてくれたことがある。

 北朝鮮の義務教育では朝鮮史「革命歴史」の時間に抗日運動の“英雄”として宣伝する金日成の偉業などを叩(たた)き込まれるというが、それはそれ。身近な日本人に触れた「植民地世代」より若い世代でも、日本に対するイメージは実はそれほど悪くなかったという証言もある。在日朝鮮人とその日本人妻らによる帰国事業を契機に品質の高い日本製の電化製品や中古車、文房具などが大量に北朝鮮に入ったことが大きかったようだ。

 解放後、親日派清算に自信をみなぎらせた北朝鮮よりも、各界各層の親日派が長く社会で指導的役割を果たした韓国の方が、いつの間にかヒステリックな反日に走っているというのも「歴史の皮肉」と言うべきか…。

(U)